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物質科学研究センターでは、研究用原子炉JRR-3、大強度陽子加速器施設J-PARC、大型放射光施設SPring-8などの先端施設において、研究装置の高度化を進めるとともに、中性子や放射光(X線)を利用した研究を行っています。
これらの活動をとおして、研究開発の現場や産業界などにおける基盤的技術の向上を図り、新たな原子力科学を切り拓くイノベーションの創出を目指しています。
Press Releasesプレス発表
地球温暖化対策として、再生可能エネルギーを活用したクリーンな発電システムの開発が世界的な課題となっています。水素を燃料として利用する固体高分子形燃料電池(PEFC)は、発電時の排出物が水のみという環境にやさしい特徴を持ち、特に燃料電池自動車への応用が期待されています(図1)。発電特性は燃料電池内部の水の挙動と密接に関連しており、その制御は極めて重要です。しかし、触媒層を構成するアイオノマー(イオン伝導性高分子)の中の水の挙動の理解は不十分でした。 本研究では、中性子小角散乱(SANS)法を用いて、PEFC内部の触媒層におけるアイオノマーの含水率を定量化する新たな評価方法を提案しました。従来の研究では加湿された触媒層に対して複雑なモデルを構築してきましたが、本研究では乾燥状態と含水状態の実験結果を直接比較することで、含水率を評価できることを見出しました。 本手法を用いた解析の結果、相対湿度が増加すると、触媒層のアイオノマーが水を強く保持することが明らかになりました。発電中の燃料電池に適用したところ、触媒層内のアイオノマーの含水率が発電性能に大きな影響を与えることを確認し、性能向上と耐久性強化に向けた新たな設計指針を提供することが可能になりました。
物質の相転移は、自然界におけるさまざまな変化の基礎として重要な現象で、例えば、水が温度変化によって氷や水蒸気になるのも相転移の一つです。相転移の普遍理論としてパーコレーション理論と呼ばれる数学的なモデルがあり、材料科学、電気伝導、生物学、ウイルスの増殖などさまざまな分野でその応用が試みられています。しかし、代表的な相転移として知られる磁気転移については、この理論の実証は単純モデルでの数値計算が行われているのみで、物理学的な実証はされていませんでした。 本研究では、新規の結晶構造の磁性体Cu4(OH)6Cl2を合成し、中性子回折やmSR実験により、従来にない特異な磁気的な性質を示すことを発見しました。この新しい磁性体では、温度低下に伴い短距離秩序が形成されますが、周りのスピン液体と呼ばれる量子状態により成長を抑えるピン留め効果が働きます。このような特異な静的短距離磁気秩序はこれまでに観測されておりませんでした。短距離秩序は温度低下に伴い線形増加しますが、秩序の割合が全体の0.492(±0.008)を超えると全体が相転移が相転移を示し、この値がパーコレーション理論と一致しました。
本研究成果は相転移に関する理解を深め、基礎科学において大きな意義を持ちます。様々な分野への波及のみならず、量子コンピュータや次世代の情報処理技術において、この特異な秩序を利用した、安定した量子状態の実現する次世代磁気デバイスへの活用などが期待されます。
なお、本成果は佐賀大学理工学部の鄭旭光教授を中心として、山内一宏准教授、東北大学大学院工学研究科の徐超男教授、内山智貴助教、陳迎教授、日本原子力研究開発機構の萩原雅人研究員、筑波大学数理物質系の西堀英治教授、九州大学大学院工学研究院の河江達也准教授、理化学研究所仁科加速器科学研究センターの渡邊功雄専任研究員との共同研究によるものです。
溶媒抽出法は、水と油のように混ざり合わない二つの液相の間で、物質がどちらの液相に溶けやすいかという性質を利用した分離・精製技術です。この技術は、石油の精製や有用金属のリサイクルなどで利用されています。溶媒抽出法による金属の分離プロセスは、水相中の金属イオンを効率的に濃縮できる利点があります。しかし、高濃度の金属イオンを取り扱うプロセスでは、油相が軽い油相と重い油相(第三相)に相分離することが問題でした。この第三相は、多量の金属イオンを取り込む性質があります。したがって、第三相が生成すると、化学プラントにおける抽出プロセスの運転は停止してしまいます。このような背景から、第三相の生成メカニズムを分子レベルで明らかにして、その要因を完全に取り除いた抽出システムを開発することが求められていました。 研究チームは、リン酸エステル化合物をフッ素化したフッ素系抽出剤を新たに開発しました。一般に、非フッ素系抽出剤を用いる抽出システムでは、第三相の生成を避けるために、水相から分離する金属イオンの濃度を意図的に下げて抽出効率を犠牲にする必要があります。ところが、本研究で開発したフッ素系抽出剤を用いた場合、高濃度の金属イオンを抽出する際に第三相を生成することはありませんでした。すなわち、「高い抽出効率」と「第三相を生成させない」という2つの能力を共存させることに成功しています。この理由を明らかにするため、中性子散乱法を用いて液相内のミクロな状態を観察した結果、フッ素系抽出剤は互いに反発し合うナノスケールの集合体構造をつくることが第三相の生成を防ぐ鍵になることがわかりました。 この発見は、これまで根本的な解決策がなかった第三相の生成に対して、具体的な解決策を示した初めての例です。今後、従来の溶媒抽出開発では利用されてこなかった、フッ素化合物を利用した金属イオンの抽出システムなど、金属イオン分離技術の高度化につながる可能性が高く、我が国の資源問題の解決に貢献することが期待されます。
2024/10/31
吉越 章隆, 福田 竜生, 津田 泰孝, 千葉 大輔(エネルギー材料研究グループ), 小畠 雅明 (アクチノイド科学研究グループ)
新開発!超軽量・コンパクト・電源不要の真空トランスファーケース
-ナノ材料・半導体材料開発を加速する超高真空技術の社会実装-
JAEA神谷超高真空技術開発ラボ、J-PARCセンターおよび物質科学研究センターは共同で軽量コンパクトかつ電源不要の真空トランスファーケースを開発しました。J-PARCが発明した技術を応用した真空トランスファーケースで、J-PARCからSPring-8まで輸送し、JAEA専用ビームラインBL22XUの硬X線光電子分光装置を用いた表面分析により真空維持機能を実証しました。 今後は、より高い真空を維持できるよう改良を進めるとともに、物質材料分野の研究に役立てたいと考えています。
2024/8/6
萩原 雅人(強相関材料物性研究グループ)
カイラリティと電気トロイダルモーメントの結合に基づく新しい強誘電性発現機構を提案・実証
―― 新しい磁性・導電性強誘電体開発の加速に期待 ――
磁性や導電性を併せ持つ強誘電体は電気磁気効果や非相反現象などから、いままでにない新しいデバイス開発へ繋がることが期待されています。しかし従来の強誘電体はd電子を持たない物質が有望とされてきたので、d電子の特徴である磁性や電気伝導性を合わせ持つ物質を発掘することは困難でした。東京大学大学院工学系研究科の永井隆之特任助教、木村剛教授らによる研究グループは、日本原子力開発研究機構の萩原雅人研究員、ファインセラミックスセンターの森分博紀主幹研究員らと共同で、結晶構造に由来するカイラリティと電気トロイダルモーメントの結合に基づく新しい強誘電性発現メカニズムを提案しました。実際に一次元磁性体SrM2(M = Ni,Co,Mg)においてJ-PARC・MLFBL08を用いた中性子回折実験によりらせん鎖の回転の変化を観測し、本メカニズムに従う強誘電性を実証しました。本研究により従来の探索指針とは異なる、構成元素に依存しない全く新しい強誘電体の探索指針が確立されました。これまで見過ごされてきた組成や結晶構造をもつ物質が強誘電体になり得る可能性を提示するもので、磁性強誘電体はもちろん導電性を併せもつ非従来型の強誘電体の物質開拓も加速されることが期待されます。
消費電力課題を克服できる次世代不揮発メモリには、低消費電力のほか、 高速応答性、高耐久性(書き換え回数)といった特性が求められます。 そうした次世代不揮発メモリの中で、ReRAM(抵抗変化型不揮発メモリ)は有力な候補とされています。 しかし遷移金属酸化物材料では、遷移元素の価数が変わり劣化しやすくなり、書き換え回数には限界があり代替不揮発メモリとすることは困難です。 本研究では、抵抗変化型不揮発メモリの材料となるアモルファスアルミ酸化物の微細な構造の特徴を明らかにしました。 アルミ酸化物は、アモルファス状態では不揮発メモリの機能が発現しますが、結晶状態では不揮発メモリ機能が生じないという特徴があります。この理由を明らかにするために、SPring-8の放射光を用いて、両者の微細な構造の違いを明らかにしました。 今回の実験結果では、不揮発メモリの機能を向上させるためには、どれくらいの構造制御の精度が必要であるかについて、定量的な値を明らかにすることができました。このことは、今後アモルファスアルミ酸化物不揮発メモリの研究開発を行っていくうえで、非常に重要な情報です。稀少元素・有害元素を含まない低環境負荷材料でかつ、化学変化により副生成物が生じないアモルファスアルミ酸化物は、消費電力問題を解決できる電子材料になると期待されます。
なお本研究は、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 小口正範)物質科学研究センター強相関材料物性研究グループの久保田正人研究副主幹、国立研究開発法人物質・材料研究機構(理事長 宝野 和博)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の加藤誠一主任研究員の研究グループにより行なわれました。
2024/6/12
上田 祐生, 元川 竜平(階層構造研究グループ)
中性子線とナノテクノロジーを武器に「悪魔のつくった表面」を制御する
― セラミックスの製造技術の課題を克服し、排ガス浄化触媒に新しい未来を! ―
セラミックスのナノ粒子は、シリコンやアルミニウムなどの酸化物や窒化物です。 セラミックスには、金属ナノ粒子に比べて腐食が起こりにくく、耐熱・耐放射線に優れ、安定に使用できるという特性があるため、機能材料として注目を集めています。 例えば、排ガス浄化触媒、光触媒、化粧品、塗料、半導体センサー材料、色素増感材料、ナノ多孔膜など、私達の生活の様々な場面で利用されています。 今回、排ガス浄化触媒の材料製造プロセスを調べたところ、反応の初期段階には液体だけしか存在しないと思われていましたが、小さなナノ粒子(1次粒子)もできることを発見しました。 さらに1次粒子は時間を置くことで規則的に集まり、少し大きな粒子(2次粒子)となることを発見しました。この発見は、機能性材料を構成する高次構造(2次粒子が規則的に配列したもの)に繋がる粒子の結合様式や配列方法を制御する集積ナノテクノロジーにかかわる知見として、新しい触媒や光学材料の製造技術の進歩に寄与することが期待されます。
なお、本研究は国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 小口正範)の青柳登研究副主幹、池田篤史研究主幹、上田祐生研究員、元川竜平研究主幹、奥村雅彦研究主幹、蓬田匠研究員、東京大学の斉藤拓巳教授、山形大学の西辻祥太郎准教授、北海道大学の佐﨑元教授らによる共同研究チームによるものです。
2024/5/27
大澤 崇人(階層構造研究グループ)
一般的な多関節ロボットでハンドリング可能な電動ピペットシステム「ぴぺすま」を5月27日に販売開始!
-外部制御なので人手が不要だから、取扱い注意の液体も容易に分注-
一般的な多関節ロボットでハンドリング可能な電動ピペットシステム「ぴぺすま」が藤原製作所より5月27日から販売開始されました。本製品は大澤崇人研究主幹の特許(特許第7162259号)を製品化したもので、完全な外部制御が可能な点が特徴です。コントロールボックスで分注したい容量を設定すれば、ボタン操作で液体の吸引と吐出が可能です。さらに、チップの排出も電動化されているため、ボタン操作でチップの排出が簡単に行えます。オプションのフットスイッチを接続すれば、足での操作も可能です。さらにUSB経由のコマンド入力にも対応していますので、コンピュータから簡単に外部制御できます。ロボットハンドで把持しやすい形状なので、自動分注システムの構築が簡単に行えます。
ハイエントロピー合金は、高い強度と優れた延性を持つという力学特性をもっています。また放射線への高い耐照射性などの機能も持っています。そのため近年多くの研究開発進められています。ハイエントロピー合金の実用化のためには、材料を成形する圧延工程の際に、軽元素が変形特性にどのような影響を持っているかを明らかにする必要があります。
河北工業大学の方偉准教授、階層構造研究グループの徐平光研究副主幹と広東省科学院の殷福星教授らによる研究チームは、JRR-3に設置されている中性子応力測定装置(RESA)と電子顕微鏡を組み合わせ、炭素を添加することで、ハイエントロピー合金を圧延する際に形成される集合組織の変化について定量的に評価しました。その結果、炭素を添加することで、圧延変形時に2種類の特殊な結晶粒の形成が促進されることを初めて明らかにしました(図1)。今後、これらの組織の配向を制御する技術を最適化することで、放射線への耐照射性に優れた新材料の開発が加速し、宇宙・原子力産業への適用が期待されます。
2024/5/16
熊田 高之, 元川 竜平, 杉田 剛(階層構造研究グループ)
シリカがタイヤを高性能化する秘密を中性子と水素のスピンで解明
ー「埋もれた界面」を観測する新技術で、複合材料の高機能化に貢献ー
ゴムとシリカを主成分とする自動車用タイヤのような有機無機ハイブリッド材料では、カップリング剤を添加することにより本来親和性の良くない有機材料と無機材料をその界面で強く結合させることにより所望の機械的性能を発揮させます。このカップリング剤がゴム材料とシリカナノ粒子の異種材料間でどのように機能しているかを知るためには、異種材料の界面をよく観測する必要があります。 しかし、電子顕微鏡やX線、中性子線を使用した従来の手法では、ゴムとシリカの界面でカップリング剤がどのように機能しているかを調べることはできません。そこで我々は、開発したばかりの「スピンコントラスト変調中性子反射率法」を用いました。この手法により、ゴム材料とシリカナノ粒子の界面にカップリング剤が単分子層を形成していることを観測できました。またカップリング剤層の構造や組成から、本試料においてはカップリング剤とゴム材料との相互浸透がゴムとシリカの結合の要となることを明らかにしました。 本成果を応用することで、今後は耐摩耗性が大幅に改良されたタイヤが開発されることが期待されます。また本手法を用いてさまざまな複合材料における界面状態を決定することで、それぞれの分野の材料開発に貢献していくことも期待されます。
2024/4/12
Cyril Micheau, 上田 祐生, 元川 竜平(階層構造研究グループ)
資源のリサイクル技術を進化させる新たな視点
- 超分子集合体」による希少金属の選択性と抽出速度のコントロール -
階層構造研究グループのMicheau Cyril研究員、上田祐生研究員、元川竜平マネージャーらは、一般財団法人総合科学研究機構の阿久津和宏副主任技師、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構 物質構造科学研究所の山田悟史准教授、山田雅子助教、フランス原子力・代替エネルギー庁のMOUSSAOUI Sayed Alii博士、MAKOMBE Elizabeth 博士、MEYER Daniel研究員、BERTHON Laurence研究部長、フランス国立科学研究センターのBOURGEOIS Damien研究部長による日仏の国際共同研究チームにより、中性子とX線を用い溶媒抽出法の微視的機構を明らかにしました。
溶媒抽出法は、水と油のように混ざり合わない2つの液体の相の間で、物質がどちらの液体相に溶けやすいかを利用した分離・精製方法です。この技術は、石油の精製、薬品製造、食品加工、有用金属のリサイクルなど、私たちの生活のさまざまな場面で利用されています。 本研究では、抽出剤として使われるマロンアミドがパラジウムとネオジムの2種類の金属を分離するときに、これまでに見たことのない性質を示すことを発見しました。 通常、どの金属がどれだけ抽出分離されるかは、抽出剤と金属イオンの相性のみで決まります。ところが今回、油相にトルエンを使った場合にはパラジウムだけが抽出され、ヘプタンを使った場合にはパラジウムとネオジムの両方が抽出されました。さらに、トルエンを使った場合にはパラジウムの抽出速度が極端に遅くなることが分かりました。 研究チームは、複数の金属イオンや抽出剤が油相や油と水の界面でつくるナノスケールの「超分子集合体」と呼ばれる構造に注目し、X線と中性子線を用いた分析を進めた結果、マロンアミドの超分子集合体によるパラジウムイオンとネオジムイオンの認識能力や界面での集合体の分散状態の違いがこのような現象を引き起こすことを示しました。 今回の研究成果は、資源のリサイクルや放射性廃液の処理技術の進歩に寄与し、我が国の資源セキュリティに貢献することが期待されます。
JAEA企画調整室の南川卓也研究員、物質科学研究センターの関根由莉奈研究副主幹、松村大樹研究主幹らは、物質を透過する力に優れかつ内部の極微量な成分を検出することが可能な放射光と中性子線を利用して、古代からの優れた塗料である黒漆の黒色が生成するメカニズムや内部のナノ構造を初めて明らかにしました。
漆は縄文時代の遺跡から分解されずに出てくるほど高い安定性を持つ、古来のスーパー塗料です。日本の伝統工芸品として馴染みのある黒漆は、漆に鉄粉を添加することで美しく深い雅やかさがある黒色を帯びています。科学的には、鉄イオンの作用により塗膜が早く乾燥することが知られていましたが、有害物質の分解を早めるような触媒機能をもつことも最近分かってきました。しかし、安定でかつ可視光を吸収する黒色を持つ黒漆の分析は困難で、黒色ができるメカニズムや内部構造は現代でも謎のままでした。黒漆の謎を解明することは、歴史資料のさらなる解析や、漆を利用した新しい機能性材料の開発に役立ちます。
今回、放射光と中性子線を利用して黒漆内部の鉄イオンや特殊なナノ構造を観ることに初めて成功しました。また、鉄イオンが漆の有機物成分であるウルシオールの構造化に作用して、ウルシオールの配列構造が美しい黒色を作り出していることを明らかにしました。今回初めて明らかになった結果から、漆に添加する金属イオン種や量を制御することで、古来の漆技術を最先端の触媒技術などに活かせる可能性が示唆されました。さらに、今回確立した分析手法を用いて歴史的資料の非破壊分析に役立てていきます。
2024/2/13
矢板 毅,横山 啓一,小林 徹,谷田 肇(アクチノイド科学研究グループ)
大地の謎に迫る!土中に含まれる金属の秘密とは?
分子スケールのシミュレーションと観測が解き明かす土の性質
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:小口正範)システム計算科学センター シミュレーション技術開発室の山口瑛子研究員、奥村雅彦研究主幹、先端基礎研究センターの田中万也マネージャー、物質科学研究センターの矢板毅研究専門官、横山啓一研究嘱託、小林徹研究副主幹(アクチノイド科学研究グループ)、谷田肇技術副主幹(アクチノイド科学研究グループ)、大阪大学放射線科学基盤機構の吉村崇教授、及び東京大学大学院理学系研究科/アイソトープ総合センター長の高橋嘉夫教授らは、大型放射光施設SPring-8を用いた分子レベルの実験と、スーパーコンピューターを用いた高精度なシミュレーションを組み合わせ、粘土鉱物が金属イオンを吸着する分子レベルのはたらきにおいて、水に溶けにくく、イオン半径が大きいイオンが粘土鉱物に強く吸着するという傾向を見出し、この傾向が天然環境の土壌中でも成り立つことを示しました。今回の発見は、土の中の放射性元素の挙動を理解する手助けとなるだけでなく、資源探査や地球以外の太陽系惑星(火星など)や小惑星(リュウグウなど)の理解、さらには土を扱う農業の効率向上にも寄与することが期待されます。本研究成果は、2月1日付(日本時間)で米国Elsevier社「Journal of Colloid and Interface Science誌」に掲載されました。
神奈川大学理学部 辻勇人教授らの研究グループは、大阪大学大学院理学研究科高分子科学専攻 中畑雅樹助教、東京理科大学理学部第一部化学科 菱田真史准教授、大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構物質構造科学研究所 瀬戸秀紀教授、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構物質科学研究センター 元川竜平マネージャーとの共同研究により、水とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒中に独自開発の疎水性発光分子が分散した系について様々な測定を行い、溶媒中の水の割合を変化させると発光分子を含む集合体のサイズと集合状態が変化し、それが発光強度の変化と相関することを示しました。
水とテトラヒドロフラン(THF)の混合溶媒中で疎水性有機分子が集合体を形成することが広く知られています。このような溶液の水とTHFの比率を変化させると、溶液の性質が変化することがしばしば観測されています。しかしながら、集合状態がどのように変化し、性質の変化に影響を与えるのかについての詳細は明確ではありませんでした。今回、水-THF混合溶媒中における疎水性の発光分子について、含水率を変化させて様々な測定を行いました。その結果、溶媒中の水の体積分率が約50%では分子が「緩い集合体」を形成し、水の割合が増加するにしたがって「密な集合体」へと変化することを明らかにしました。また、このような集合状態変化と発光強度変化との対応も明らかにしました。今回得られた知見は、有機分子の集合体形成制御技術への応用が想定されます。具体的には、有機ELや有機レーザーなどの表示・照明デバイスの効率向上や、薬物輸送システムの効率化による薬効の改善など、広汎な応用が期待できます。 本研究成果は、2023年12月7日(米国時間)に米国化学会の学術誌「The Journal of Physical Chemistry Letters」誌にてオンライン先行公開されました。
2023/12/1
関根 由莉奈, 杉田 剛, 柴山 由樹(階層構造研究グループ)
天然素材のセルロースを凍らせるだけ!強い機能性ゲル材料を新たに開発
凍結によるセルロースの結晶相転移と簡易なゲル合成法を発見
天然構造を持つセルロースナノファイバーとごく低濃度の水酸化ナトリウムを混ぜて、凍らせて、クエン酸を加えて、溶かすだけで、高強度多孔質ゲル材料ができることを発見しました。セルロースと水酸化ナトリウムを混ぜた溶液を凍結させると、セルロースの結晶相転移がおこることを発見し、高強度のゲル材料開発に繋げました。 開発した本ゲル材料は、今後、金属や二酸化炭素の回収材などへも応用可能な広い機能性をもちます。
大阪大学大学院基礎工学研究科 藤原秀紀助教、中谷泰博さん(当時大学院生)、関山明教授の研究グループは、当センターエネルギー材料研究グループの斎藤祐児研究主幹らとのSPring-8における共同研究により、超電導状態を形成する"電子のカタチ"ともいえる、実空間における電荷の分布を、放射光により直接捉えることに世界で初めて成功しました。本研究成果は、2023年10月13日23時(日本時間)にアメリカ物理学会「Physical Review B」(オンライン)に掲載されました。
(株)藤原製作所は、ろ過の作業を劇的に簡素化した“スマート”な自動減圧ろ過装置「ろかすま」を開発しました。 本製品は物質科学研究センターの大澤崇人研究主幹の特許「減圧ろ過装置(特許第7197867号)」を製品化したものです。 また、2つのサンプルを同時に減圧ろ過できる「ろかすまツイン」も併せて開発しました。 今回開発した「ろかすま」「ろかすまツイン」は、たくさんの種類のサンプルを連続してろ過する必要がある分野での活用が期待できます。 「ろかすま」「ろかすまツイン」は10月23日に販売開始します。
国立研究開発法人 産業技術総合研究所(以下「産総研」という)地質調査総合センター 地質情報研究部門リモートセンシング研究グループ 松岡 萌 研究員・デジタルアーキテクチャ研究センター 地理空間サービス研究チーム 神山 徹 研究チーム長は、東北大学大学院理学研究科地学専攻 中村 智樹 教授、天野 香菜 学術振興会特別研究員(地学専攻・博士課程後期)、日本原子力研究開発機構(以下「原子力機構」という)物質科学研究センター 階層構造研究グループ 大澤 崇人 研究主幹、東京大学大学院理学系研究科附属宇宙惑星科学機構/地球惑星科学専攻 橘 省吾 教授、九州大学 理学研究院 地球惑星科学部門 奈良 岡浩 教授・岡崎 隆司 准教授 などと共同で、小惑星探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウの表面を20 kmほど上空から観測したデータと、リュウグウから採取された試料を地球大気にさらさずに測定したデータの直接比較を行いました。その結果、リュウグウ表面の観測データと、試料の測定データはよく一致する一方で、水の有無を知る鍵となるヒドロキシ基(-OH)による吸収に明らかな違いがあることがわかりました。この違いの原因を明らかにするため、リュウグウに似て含水ケイ酸塩に富む始原的な隕石の実験およびデータ解析を行った結果、リュウグウは宇宙線や宇宙塵にさらされて表面(1/100 mm程度)が変質し(宇宙風化作用)、水が部分的に失われていることを示しました。本研究成果は、探査機からのリモートセンシングと採取試料分析を組み合わせて初めて明らかにできたものであり、惑星探査におけるサンプルリターンの重要性を示す画期的な成果の一つと言えます。なお、研究の詳細は2023年9月27日 (日本時間)に「Communications Earth & Environment」に掲載されました。
2023/8/22
熊田 高之, 中川 洋, 関根 由莉奈, 元川 竜平(階層構造研究グループ)
中性子と水素のスピンでナノプレート状の氷結晶観測に成功
食品・医薬品・細胞組織の凍結保存技術開発へ貢献に期待
階層構造研究グループの熊田高之研究主幹、中川洋研究主幹、関根由莉奈研究副主幹、 元川竜平研究主幹らは、総合科学研究機構の大石一城次長ら、広島大学川井清司大学院統合生命科学 研究科教授とともに、スピンコントラスト変調中性子小角散乱法を用いてグルコース水溶液中に生成した直後の氷結晶の特異な形状を観測することに初めて成功しました。
電子源の材料である六ホウ化ランタン(LaB6)に六方晶窒化ホウ素(hBN)をコーティングすることで仕事関数が2.2 eVから1.9 eVに低下し、電子放出量が増加することを発見した。hBNコーティングによってhBNとLaB6の界面に「外向きの双極子モーメント」が形成されることが、仕事関数を低下する原因であることを解明した。本研究成果は、高効率な電子源の作製、ひいては電子顕微鏡や電子線描画装置、放射光施設の高性能化につながると期待されています。
日本原子力研究開発機構(理事長 小口正範、以下、「原子力機構」という。)物質科学研究センター エネルギー材料研究グループ 津田泰孝 博士研究員、吉越章隆 研究主幹、および東北大学(総長 大野英男、以下「東北大学」という。)マイクロシステム融合研究開発センター 高桑雄二 教授、国際放射光イノベーション・スマート研究センター、兼 多元物質科学研究所 小川修一 助教、ならびに福井工業高等専門学校(校長 田村隆弘、以下「福井高専」という。)、山本幸男 教授らの研究グループは、シリコン酸化膜の成長メカニズムをSPring-8の高輝度放射光を用いたリアルタイム光電子分光法観察により明らかにしました。
シリコン(Si)は、現代の半導体産業を支える最も基本的な材料の一つです。コンピュータの演算を司る集積回路中にはSi基板を酸化して作られる素子、「トランジスタ」が無数に搭載されており、近年その数は数十億個に達しています。それにともない、トランジスタ一つ当たりの大きさは極めて微小となっているため、酸化反応を精密に制御し、欠陥の少ない良質な酸化膜をSi基板上に作製することが求められています。 一方で、そのような原子レベルの膜厚領域における酸化反応機構は十分に理解されていませんでした。
本研究では、SPring-8の放射光を用いたリアルタイム観察によって、ナノレベルの世界で進行するSi酸化反応を逐次追跡しました。その結果、これまで酸化には無関係と思われていた電子や正孔などのキャリア注2が関与する反応機構を世界で初めて明らかにしました。 これまで知られていなかったSi酸化反応を支配する機構を明らかにした本研究により、微細構造化が進むシリコンデバイスの省電力化、小型化、信頼性向上に貢献できると期待されます。 本成果は原子力機構、東北大学、福井高専との共同研究で行われ、12月20日(日本時間)に「Journal of Chemical Physics」にオンライン掲載されました。
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 (理事長 小口正範) 原子力科学研究部門 先端基礎研究センター の社本真一客員研究員と、一般財団法人総合科学研究機構 (理事長 横溝英明) 中性子科学センターの飯田一樹副主任研究員、原子力機構物質科学研究センターの樹神克明グループリーダー、 同J-PARCセンターの稲村泰弘副主任研究員らのグループは、新たな解析プログラムを開発することで、スピン揺らぎ、 すなわち波として揺らぐスピン波の様子を、1ナノメートル以下 (=サブナノメートル) で直接観測することに世界で初めて成功しました。 本成果は、他の手法では困難だった、ナノメートルサイズの小さな磁性体中のスピンの揺らぎを直接観測することを可能にするものです。
弱いデータ強度にも対応可能な、フーリエ変換を利用した新しい解析法を用いることで、粉末磁性体でもスピン揺らぎをサブナノメートルサイズで直接観測することができるようになりました。 FeTiO3はサブナノメートル離れた2つのスピンの揺らぎの方向が、同方向と反対方向の2種類のモードが存在すると言われています。 今回開発した手法により解析した結果、その2種類のモードの観測に成功しました。 J-PARC MLFの中性子強度の増加に加え解析プログラムを工夫した本成果により、微細化するナノ磁性材料でもスピン揺らぎの直接観測が実現しその理解に大きく貢献すると期待されます。
本研究成果は、英国の科学雑誌『Scientific Reports』に12月7日付 (英国時間) でオンライン掲載されました。
2022/10/25
大澤 崇人(階層構造研究グループ)
全固体電池内のリチウムイオンの動きを捉えることに成功
-全固体電池の研究開発を加速-
理化学研究所(理研)光量子工学研究センター光量子制御技術開発チームの小林峰特別嘱託研究員(研究当時)、日本原子力研究開発機構物質科学研究センター中性子材料解析研究ディビジョンの大澤崇人研究主幹らの国際共同研究グループは、動作(充電)中の全固体電池内のリチウムイオンの動きを捉えることに成功しました。
本研究成果は、次世代リチウムイオン電池として期待される全固体電池の研究開発を加速するものと期待されます。
今回、国際共同研究グループは、リチウム-6(6Li)濃度を濃縮した正極を用いて全固体電池試料を作製し、その試料に熱中性子を入射し、6Li(n,α)3H熱中性子誘起核反応によって放出される粒子のエネルギーを時間分解して分析することで、全固体電池内のリチウムイオンの動きを捉えることに成功しました。また、その動きの解析から、固体電解質中のリチウムイオンの移動メカニズムおよび移動領域を突き止めました。これらの結果は、全固体電池の開発が充放電中のリチウムイオンの動きの知見を得ながら行えるフェーズに入ったことを示しています。
本研究は、科学雑誌『Small』オンライン版(現地時間9月30日付)に掲載されました。
2022/9/27
小林 徹, 谷田 肇, 下条 晃司郎, 関口 哲弘, 金田 結依, 松田 晶平, 横山 啓一, 矢板 毅(アクチノイド科学研究グループ)
水に溶けたラジウムの姿を世界で初めて分子レベルで観測
―キュリー夫妻による発見から124年、ラジウムの分子レベル研究の幕開け―
ラジウムはキュリー夫妻により1898年に発見された放射性元素として有名です。体内や環境中では水に溶けているため、その状態のラジウムを理解することは重要ですが、発見から100年以上経っても未解明でした。私達は、大型放射光施設SPring-8において広域X線吸収微細構造解析法を用い、水溶液中に溶けたラジウムイオン(Ra2+)とその周辺に存在する水分子の水和構造の観測に世界で初めて成功しました。また、スーパーコンピューターを用いて高精度なシミュレーションを行い、Ra2+は同族元素に比べて水分子を束縛する力が弱く、水和構造が変化しやすいことを明らかにしました。これらの結果から、Ra2+は同族元素と比べて、水から離れ生体内や環境中に取り込まれやすいことが示唆されました。本研究にはアクチノイド科学研究グループの研究員が多数参画し、成果は2022年8月19日に米国Cell Press社の学術誌「iScience」にオンライン掲載(オープンアクセス)されました。https://www.cell.com/iscience/fulltext/S2589-0042(22)01035-5
2022/9/23
大澤 崇人(階層構造研究グループ)
素粒子ミュオンにより非破壊で小惑星リュウグウの石の元素分析に成功
-太陽系を代表する新たな標準試料となる可能性-
高エネルギー加速器研究機構(KEK)物質構造科学研究所の三宅康博名誉教授、梅垣いづみ助教、竹下聡史助教と日本原子力研究開発機構(JAEA)の大澤崇人研究主幹は、大阪大学の二宮和彦准教授、寺田健太郎教授、邱奕寰特任研究員、東京大学の高橋忠幸教授、長澤俊作大学院生、京都大学の谷口秋洋准教授、国際基督教大学の久保謙哉教授、宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所の渡辺伸准教授、東北大学の中村智樹教授(「はやぶさ2」初期分析「石の物質分析チーム」)、和田大雅大学院生らのミュオン分析チームと共同で、ミュオンを用いた元素分析法を小惑星リュウグウの石に適用し、非破壊でその元素組成を明らかにすることに成功しました。リュウグウの石の組成は、これまで最も始原的な物質であると言われていた隕石と近い組成を示す一方で、これらの隕石と比べて酸素の含有量が明らかに少ないことが分かりました。 ミュオンを用いた元素分析法は、研究グループが大強度陽子加速器施設(J-PARC)において世界に先駆けて開発してきた新しい分析手法で、分析することが難しい生命の材料である炭素や窒素などの軽い元素を非破壊で定量することができます。 本研究成果を含む「はやぶさ2」初期分析「石の物質分析チーム」(代表 中村智樹 東北大学教授)による全体の研究成果は、9月22日(木)(日本時間9月23日(金)午前3時)にアメリカ科学振興協会(AAAS)サイエンス(Science)誌に掲載されました。
2022/9/16
吉越 章隆, 津田 泰孝(エネルギー材料研究グループ)
炭素原子膜グラフェンに含まれる微量元素量の計測に成功
ドーピングによるグラフェン機能制御へ大きな進展!
グラフェンは炭素原子が六角形の網目状につながった原子1個分の厚さの膜で、すでに防錆膜や酸化保護膜で実用化しているほか、次世代の電池や高速半導体デバイスへの発展が期待されています。このグラフェンの機能を制御するためには、グラフェンに他の元素を添加する「ドーピング」が不可欠です。従来手法では極めて薄いグラフェンにドーピングされた元素の量を測ることは難しく、ドーピング量と機能の変化を比較することは困難でした。 東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター(兼多元物質科学研究所)の小川修一助教らの研究グループと日本原子力研究開発機構、産業技術総合研究所、静岡大学との共同研究チームは、放射光を利用した光電子分光法を用いてドーピングされたカリウムの量を測ることに成功しました。 研究成果は2022年9月12日(現地時間)にオランダ学術出版大手の専門誌「Applied Surface Science」にオンライン掲載されました。
2022/5/20
松田 晶平, 横山 啓一(アクチノイド科学研究グループ)
高レベル放射性廃液中の元素を光で選別、分別回収の革新的原理を実証
―デザインされた光により、光反応の元素選択性と反応性を両立させることに成功―
アメリシウム(Am)が特異的に吸収する波長のレーザーを硝酸水溶液中の元素へ照射することで酸化反応が誘起されることを見出しました。これにより可視光を用いたアメリシウムの酸化状態の制御が実現しました。さらに、ランタノイド共存下でアメリシウムだけを選択的に光酸化し、その溶液を溶媒抽出することでアメリシウムを分離することにも成功しました。使用済み燃料中に含まれるアクチノイドもしくはランタノイドと呼ばれる元素群は、同じ酸化状態では分離が難しいことが知られていますが、各元素が特異的に吸収する光によって選択的に酸化状態を制御すれば、元素分離が可能であることを実証しました。この結果は、今回の手法が放射性廃棄物の分別原理として新たな選択肢となり得ることを示唆しています。また、アメリシウム以外のランタノイド・アクチノイドに対しても有効な選別原理になると考えられるため、希少金属の再利用を促進する超高純度精製法への発展が期待できます。本研究はアクチノイド科学研究グループの多数の研究員により主体的に実施され、成果は米国科学振興協会(AAAS)が発行するオープンアクセス型総合学術誌「Science Advances」に2022年5月18日付で掲載されました。https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.abn1991
2022/5/15
目時 直人(強相関材料物性研究グループ)
小さな原子の磁気をもっと小さな原子核の磁気と比べて測定する
-強い磁石の開発に役立つ簡便で正確な「原子の磁気」の新測定法の開発-
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:小口正範)、物質科学研究センター強相関材料物性研究グループの目時研究主幹らは、磁性体の磁力の源である磁性元素をその原子核の磁気によって特定し、原子の持つ小さな磁気の強さを、さらに小さな原子核の磁気と比較して簡便かつ正確に測定する新たな手法を開発しました。従来の磁気強度の測定手法では、結晶構造や磁気構造の全体像を詳細に決める必要があったため、数百点に及ぶ膨大なデータを測定しなければならず、しかも複雑な解析が必要で手間がかかっていました。実験および解析上の問題からうまくいかないこともあり、簡便かつ正確に測定する手法が求められていました。本研究において、磁性元素の磁気の発生に伴って原子核に磁気が生じることを実験的に確認しました。また、原子核の磁気の存在により磁性元素を特定し、その小さな原子の磁気を、より小さな原子核の磁気と比較して測定する手法を開発しました。磁性元素を特定するために一つの測定点を使って容易かつ正確に磁気の大きさを決められます。結晶構造や磁気構造の情報を用いないために膨大な測定データや複雑な解析は不要です。異なる種類の磁性元素が含まれる複雑な磁性体も、それぞれを特定して磁気の大きさを測定できます。 磁気の強さは磁性体の重要な性質です。この手法を種々の磁性元素に適用し、磁気的性質の起源や複雑な磁気構造を理解して、有用な機能を持つ新物質の開発、強力な磁石に用いられる磁性体の開発などに役立てます。本研究成果は、2022年5月15日発行の日本物理学会欧文誌「Journal of the Physical Society of Japan」(5月号)に掲載されました。
2022/4/7
松村 大樹(エネルギー材料研究グループ)
光と加熱で、金属と絶縁体を行ったり来たり
-高性能な光応答イットリウム化合物薄膜を世界で初めて作製-
東京工業大学 物質理工学院 応用化学系の清水亮太准教授、小松遊矢 大学院生(博士後期課程2年)らの共同研究グループは、イットリウム・酸素・水素の化合物(YOxHy)の結晶方位を揃えたエピタキシャル薄膜を世界で初めて作製し、光照射と加熱によって絶縁体と金属の繰り返し変化に成功した。 光センサや光メモリなどの光エレクトロニクス応用に向けて、光照射により電気的物性が大きく変化する物質の開発が望まれている。しかしながら、電気抵抗が温度下降に伴い増加する「絶縁体・半導体」から、温度下降に伴い減少する「金属」への変化を、光照射によって達成した報告はなかった。本研究では、絶縁体であるYOxHyエピタキシャル薄膜に光を照射することでその電気抵抗が大幅に減少した「金属」状態を発現させ、当該金属状態を数日スケールで保持することに成功した。従来のガラス基板上の多結晶体のYOxHyでは、太陽光照射により電気抵抗が1桁程度減少するが、エピタキシャル薄膜化により3桁以上の減少を達成した。さらに、エピタキシャル薄膜に紫外レーザ光を照射すると電気抵抗は7桁以上も減少し、絶縁体からの金属化を実現した。この結果を説明するために、局所構造・化学組成の高分解能計測から構造モデルを構築し、これを基に電子状態を計算した結果、薄膜内の水素が光応答して余剰電子が生じ金属化に至る微視的機構を明らかにした。 本研究の成果を活用することで、高性能な光メモリ・スマートウィンドウ等のデバイス応用につながる。また、薄膜内水素の密度・結合・荷電状態を高度に制御することで、さらなる光エレクトロニクスの進展が期待される。 研究成果は4月7日に、米国化学会誌「Chemistry of Materials(ケミストリーオブ マテリアルズ)」にArticleとしてオンライン掲載(オープンアクセス)される。
2022/3/31
松村 大樹(環境・構造物性研究グループ)
燃料電池触媒の酸素還元反応活性を2倍以上向上させることに成功
-触媒性能10倍に向け前進 燃料電池のコスト低減に期待-
国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(理事長:平野俊夫、以下「量研」という。)量子ビーム科学部門高崎量子応用研究所の八巻徹也次長・プロジェクトリーダー、山本春也上席研究員、木全哲也協力研究員(当時は実習生)、国立大学法人東京大学大学院工学系研究科(研究科長:染谷隆夫)の毛偉特任研究員(研究当時は助教)、寺井隆幸名誉教授(研究当時は教授)、国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長:児玉敏雄)の松村大樹研究主幹、下山巖研究主幹らを中心とする研究グループは、イオンビーム照射した炭素材料に白金を保持させる新手法によって、固体高分子形燃料電池(PEFC)の触媒性能を2倍以上向上させることに成功しました。また、この性能向上には、炭素材料に導入した欠陥構造と白金(Pt)微粒子の相互作用に起因するメカニズムが関与することを明らかにしました。今回の成果は、研究グループが掲げた目標「酸素還元反応(ORR)活性と耐久性を掛け合わせた性能で10倍向上」の達成をぐっと手繰り寄せるものです。 水素エネルギーはカーボンニュートラル実現の切り札の一つです。水素を使う燃料電池自動車(FCV)の普及拡大には、搭載するPEFCのコスト低減が不可欠で、そのカギを握るのがPEFC酸素極のORR触媒という材料です。現在のORR触媒には、高価なPtの微粒子を炭素材料に保持させた「Pt微粒子/炭素材料」が大量に使われており、Pt使用量を削減するためのORR活性と耐久性の向上が技術課題になっています。 そこで研究グループは、Pt微粒子と炭素材料との界面で発現するPtと炭素の相互作用を使ってPt微粒子の電子構造を操作すれば、この課題を克服できると考えました。量研のイオン照射研究施設(TIARA)を用いて炭素材料に欠陥構造を導入し、その表面にPt微粒子を形成させるという新しい方法で触媒を作製したところ、欠陥導入がない場合と比較して2倍以上優れたORR活性を実現できました。また、放射光実験と理論計算により、高活性化のメカニズムがPt微粒子から炭素材料への電荷移動に伴う界面相互作用の強化に起因したPtの酸化抑制にあることを突き止めました。 研究グループは、FCVの本格的普及に向け、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が策定した燃料電池・水素技術開発ロードマップを参考に、「ORR活性と耐久性を掛け合わせた性能で10倍向上」という目標を掲げて研究を進めています。 イオンビームを用いた欠陥構造の導入による界面相互作用の強化は、ORR活性向上だけでなく、ORRに伴うPt微粒子の劣化抑制の効果も示唆しています。研究グループでは、今回の成果を踏まえて、すでに耐久性に関する研究にも着手し、その向上の端緒をつかみつつあります。 今後、掲げた目標を達成することで、PEFCのPt使用量を大幅削減するための技術の確立を目指します。将来、本技術による実触媒の製造プロセスが実現すれば、PEFCのコスト低減という課題は解決され、FCVの本格的普及や水素利活用の拡大を通してカーボンニュートラル実現への貢献が期待できます。 本研究の一部は、日本学術振興会の科学研究費助成事業(18H01923、21H04669)の助成を受けて実施したものです。なお、本研究成果は米国物理学会「Physical Review Materials」誌のオンライン版に2022年3月31日(木)1:00(日本時間)に掲載されました。
2022/3/30
金子 耕士(多重自由度相関研究グループ)
超高密度な磁気渦を示すシンプルな二元合金物質を発見
-次世代磁気メモリへの応用に期待-
東京大学大学院工学系研究科の高木里奈助教、関真一郎准教授らを中心とする研究グループは、理化学研究所、東京大学物性研究所、日本原子力研究開発機構、総合科学研究機構、東京大学大学院新領域創成科学研究科との共同研究のもと、単純な結晶構造を持つEuAl4(Eu:ユウロピウム、Al:アルミニウム)という物質に着目し、中性子・エックス線の散乱実験を行ったところ、直径3.5ナノメートルの超高密度な磁気スキルミオンを生成していることを発見しました。さらに、磁場や温度によって磁気スキルミオンの並び方が正方格子から菱形格子へと変化することを見出し、その起源が物質中を動き回る電子が媒介する相互作用に由来していることを明らかにしました。本研究成果は、二種類の元素のみを含む単純な二元合金であっても、極小サイズの磁気スキルミオンの多彩な秩序構造を実現できることを示しており、今後の物質設計・探索や制御手法の開拓に重要な指針を与えることが期待されます。本研究成果は、2022年3月30日(英国夏時間)に英国科学誌「Nature Communications」にオンライン掲載されました。
2021/12/11
松村大樹 (環境・構造物性研究グループ)
世界初!元素種を識別して材料のミクロ構造を解析するノイズ耐性の高い新解析法を開発
―将来的なデバイス材料のミクロ構造研究に活路を開く―
熊本大学産業ナノマテリアル研究所の熊添博之 特任助教、赤井一郎 教授らの共同研究グループは、イットリウム酸水素化物(YHO)薄膜の広域X線吸収微細構造(EXAFS)スペクトルに、電子波多重散乱理論に基づいた基底関数を用いたスパースモデリングとベイズ推定を組み合わせた新しい解析法を適用しました。 その結果、YHO薄膜のイットリウム周りに存在する酸素原子が四面体配位していることが明らかになり、ベイズ推定により、データに重畳するノイズをモデリングして、解析困難なノイズの大きいデータからミクロ構造を解析することに成功しました。この手法は機能性薄膜材料を始めとする様々な物質のミクロ構造解明への応用が期待されます。 本研究は、科学技術振興機構(JST)戦略的創造研究推進事業(CREST 熊本大学 赤井一郎 教授(JPMJCR1861)、CREST 東京大学 岡田真人 教授(JPMJCR1761)、CREST 物質・材料研究機構 岩崎悠真 主任研究員(JPMJCR21O1)、さきがけ 筑波大学 五十嵐康彦 准教授(JPMJPR17N2)、さきがけ 東京工業大学 清水亮太 准教授 (JPMJPR17N6)、 文部科学省科学研究費助成事業(東京工業大学 清水亮太 准教授(JP19H02596、JP19H04689)、東北大学 折茂慎一 教授(JP18H05513)、東京工業大学 一杉太郎 教授(JP18H05514)および旭硝子財団の支援を受け、あいちシンクロトロン光センター イエザーリ・ファビオ 研究員、同 岡島敏浩 副所長、東京工業大学 小松遊矢(博士後期課程2年)、日本原子力研究開発機構 松村大樹 研究主幹、量子科学技術研究開発機構 齋藤寛之 上席研究員、熊本大学 岩満一功 技術主任および九州シンクロトロン光研究センター 妹尾与志木 所長の共同研究にて行いました。本研究成果は米国科学雑誌「AIP Advances」に令和3年12月10日午前10時(米国東部時間)に掲載されました。
2021/11/25
米田安宏 (環境・構造物性研究グループ)
チタン酸バリウムナノキューブの粒径を制御する手法を新たに開発
ー環境調和型のプロセスを採用 高性能小型電子デバイスの開発に期待ー
茨城大学大学院理工学研究科(工学野)の中島光一准教授、同研究科量子線科学専攻・博士前期 課程の廣中航太さん、大内一真さん、茨城大学工学部の味岡真央さん、茨城大学大学院理工学研究 科の小林芳男教授、大阪大学産業科学研究所の関野徹教授、垣花眞人特任教授(常勤)、東北大学 多元物質科学研究所の殷シュウ教授、日本原子力研究開発機構の米田安宏研究主幹の研究グループ は、チタン酸バリウム(BaTiO3)ナノキューブの粒径制御には、出発原料である酸化チタン(TiO2) の粒径が影響することを明らかにしました。本研究は2021年3月29日のプレスリリース「チタン酸バリウムナノキューブ合成と粒子表面の原子配列の可視化に成功」と関連するものです。
2021/6/21
吉井賢資 (環境・構造物性研究グループ)
磁場と圧力でマルチに冷却可能な酸化物新材料
-フェリ磁性電荷転移酸化物におけるマルチ熱量効果の実証―
京都大学、日本原子力研究開発機構、高輝度光科学研究センター、マックスプランク固体研究所の研究グループは、電荷転移を示すペロブスカイト構造フェリ磁性酸化物BiCu3Cr4O12が磁場および圧力を加えた際に大きな熱量効果(マルチ熱量効果)を示し、高効率な熱制御を実現する新たな固体熱制御材料となることを実証しました。現在、世界の電力消費の25~30%が冷却に使われていると言われるほど、熱の制御は人類のエネルギー・環境問題において重要な課題となっています。熱量効果を利用すると高効率で環境への負荷の小さい冷却などが実現できるので、熱に関する諸問題の解決に繋がります。通常、熱量効果では1つの外場で制御されますが、今回発見した材料では、磁場と圧力という複数の(=マルチな)手法により熱を効率的に制御できます。さらに、磁場と圧力を協同的に加えることでより広範囲な熱特性の制御も可能となり、また新規な高効率冷却技術の発展にもつながります。本成果は、6月21日にSpringer Natureグループの国際学術誌Scientific Reportsにオンライン掲載されました。
2021/4/1
熊田高之(階層構造研究グループ)
核スピン偏極化試料での偏極中性子回折による構造解析法の開発
ー水素の位置情報を選択的に抽出ー
山形大学が原子核物理実験用に開発した結晶試料の核スピン偏極技術を、スピンコントラスト偏極中性子回折測定に展開しました。これまでは結晶試料を核偏極させる技術がなかったため、水素核偏極試料を用いるスピンコントラスト法は非晶試料に限定されていました。それに対し、我々は山形大学の核スピン偏極技術により水素核偏極したグルタミン酸試料をJ-PARC MLF の中性子小角・高角散乱装置(BL15, 大観)に組み込むことで、スピンコントラスト変調中性子粉末結晶構造解析実験に成功しました。水素核偏極度により変化する散乱ピーク強度を解析することで、他元素と識別された水素の構造情報を抽出できることが示されました。今後、本測定法は環境問題の見地から注目を集めている水素機能性材料の開発などにも貢献することが期待されます。この成果は2021年3月3日付けで学術誌『Journal of Applied Crystallography』に掲載されました。
2021/3/30
米田安宏(環境・構造物性研究グループ)
チタン酸バリウムナノキューブの合成と粒子表面の原子配列の可視化に成功
ー 高性能小型電子デバイスの開発に期待 ー
チタン酸バリウムを低温で水熱合成することによってナノキューブ化に成功しました。さらにナノキューブの粒子表面が酸化チタン層で再構成されていることを見出しました。
2021/2/19
津田 泰孝、吉越 章隆(アクチノイド化学研究グループ)
異なる金属を混ぜて表面反応を制御する
~合金表面でさびができる過程を解明、腐食に強い材料の開発に貢献 ~
日本原子力研究開発機構 物質科学研究センター アクチノイド化学研究グループ 津田 泰孝 博士研究員、吉越 章隆 研究主幹、ならびに大阪大学 放射線科学基盤機構 岡田 美智雄 教授、工学研究科 Diño Wislon Agerico Tan准教授らの研究グループは、パラジウム、白金を銅と混ぜあわせた合金の表面で、高速の酸素分子が反応し酸化物を作る過程を解明しました。
2021/2/4
関根 由莉奈(階層構造研究グループ)
廃棄豚骨が有害金属吸着剤に
―廃材を利用した安価で高性能な金属吸着技術を実現―
物質科学研究センター階層構造研究グループの関根由莉奈研究員、先端基礎研究センターの南川卓也研究員らが参画する研究グループは、骨がストロンチウムやカドミウムなどの金属に対して高い吸着性能を有するメカニズムを明らかにするとともに、その性質を利用することで、既存の低コストな天然吸着剤よりも高い効率で、ストロンチウムやカドミウムなどの有害金属を吸着して取り除くことができる新しい吸着剤を開発することに成功しました。食品廃棄骨の“豚骨”を重曹(炭酸水素ナトリウム)に浸け込むだけで、低コストで容易に作ることができる吸着剤を実現した本研究成果は、食品廃棄物の有効活用に繋がるだけではなく、汚染水の浄化、土壌に埋めることで汚染物質の地下水や海水への流入を防ぐ技術、また、有用金属回収技術への活用が期待されます。
2020/12/4
竹田 幸治(電子構造物性研究グループ)
半導体が磁石にもなるとき何が起こるのか?
-エレクトロニクスから次世代スピントロニクス社会実現への一歩-
物質科学研究センターの竹田幸治研究主幹、東京大学大学院工学系研究科の大矢忍らの研究グループは、SPring-8の原子力機構専用ビームラインBL23SUを利用して、強磁性半導体の代表的な物質のひとつである(Ga,Mn)As 中のMn原子の磁性情報だけを抜き出し、温度の降下とともにMn原子が常磁性状態から強磁性状態に変化していく過程を詳細に観察することで、原子レベルでの強磁性発現メカニズムを明らかにすることに成功しました。
2020/10/30
関根 由莉奈(階層構造研究グループ)
凍らせて、混ぜて、溶かすだけ 高い強度と成型性を持つ新しいゲル材料を開発
―身近なバイオマス素材を利用した汎用性の高い材料開発に新展開―
先端基礎研究センター界面反応場化学研究グループの関根由莉奈研究員(兼物質科学研究センター)、南川卓也研究員、杉田剛研究員らが参画する研究グループは、木材から得られるセルロースナノファイバーとレモンに含まれるクエン酸を凍結濃縮させて反応することにより、これまでにない圧縮復元性を持ち、非常に高い成型性を持った、環境にやさしい高強度ゲル材料「凍結架橋セルロースナノファイバーゲル」の開発に成功しました。
2020/10/26
吉越 章隆(アクチノイド化学研究グループ)
速い分子だと炭素の網を通り抜ける!?
酸素がグラフェンをすり抜ける現象を発見
東北大学国際放射光イノベーション・スマート研究センター(兼多元物質科学研究所)の小川修一助教、物質科学研究センターの吉越章隆研究主幹らが参画する研究グループは、厚さが原子1層しかない炭素の網であるグラフェンは、酸素を通さないとされていましたが、高速の酸素分子を照射すると酸素分子がグラフェンを壊すことなく透過する現象を発見しました。分子の「速度」によってグラフェンを透過できたりできなかったりする現象は世界で初めての発見で、今後の研究により、さらに大きな分子の「通りぬけ」の発見も期待されます。
2020/10/8
竹田 幸治(電子構造物性研究グループ)
新奇な磁性トポロジカル絶縁体ヘテロ構造の作成に成功
-磁性とトポロジカル物性の協奏現象に新たな知見-
東京工業大学 理学院 物理学系の平原徹准教授、物質科学研究センターの竹田幸治研究主幹らの研究グループは、トポロジカル絶縁体の表面近傍に複数の規則的な磁性層を埋め込むことに成功し、その表面ディラックコーンのエネルギーギャップが磁化秩序の発現する温度より高い温度で閉じることを実証した。
2020/8/28
小畠 雅明(電子構造物性研究グループ) 吉井 賢資, 福田 竜生(環境・構造物性研究グループ)
放射線に負けない熱電発電の実現に向けて
—スピン熱電素子が重イオン線に高耐性を持つことを実証—
近年、電子スピンを利用した「スピン熱電素子」が開発され、設計自由度、低環境負荷、経済性の観点で既存技術より優位になると期待されています。これを同位体電池に組み込めば、次世代の発電方法の開発につながる大きな展望が開けますが、放射性同位体と共存する過酷環境下でスピン熱電素子が性能をどの程度維持することができるか未確認でした。本研究では、スピン熱電素子の放射線に耐性を検証するため、高エネルギー放射線である重イオン線を照射することで過酷環境での耐用年数の見積もりを行い、仮に熱源として放射性の使用済み核燃料を使った場合でも数百年にわたって発電性能の劣化が生じないことを確認しました。さらにこの劣化は、スピン熱電素子の接合界面での化学反応によって生じる事を示しました。将来的には使用済み核燃料などの放射線環境下での廃熱を回収し、安全かつ有効に活用する新技術への展開に貢献するものと期待されます。
2020/7/21
山内 宏樹(多重自由度相関研究グループ)
伝導電子スピンの奇妙な「短距離秩序」を世界最高温度で発見
-新物質Mn3RhSiで新しい金属状態が実現-
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)物質科学研究センターの山内宏樹研究副主幹、一般財団法人総合科学研究機構(理事長 横溝英明)中性子科学センターの社本真一サイエンスコーディネータ、国立研究開発法人理化学研究所(理事長 松本紘)仁科加速器科学研究センターの渡邊功雄専任研究員および芝浦工業大学(理事長 鈴見健夫)理工学研究科地域環境システム専攻のディタ・プスピタ・サリ博士研究員(現: 工学部助教)らのグループは、原子力機構が世界で初めて合成した空間反転対称性を持たない金属磁性体の新物質Mn3RhSiにおいて、伝導電子スピンの一部が短距離秩序化し常磁性相内で相分離した奇妙な状態が720 K (447℃)という世界最高温度で実現していることを中性子とミュオンを相補的に用いた観測で発見しました。
2020/3/26
徐 平光(応力・イメージング研究グループ)
ものづくり現場で中性子線を使った材料分析が可能に
-軽量化を可能にする鋼材開発に新たな道筋-
自動車などの軽量化の実現には、高強度と高い延性を両立した鉄鋼材料の開発が不可欠であり、集合組織を定量的に把握することが重要です。鉄鋼材料のバルクに対して集合組織を測定するのに、透過性の高い中性子を用いる回折法は有効ですが、これまでその中性子源は研究用原子炉などの大型実験施設に限られました。
徐平光らの共同研究グループは、原子力機構が開発してきた中性子回折法による集合組織測定技術と、理研が開発してきた理研小型加速器中性子源システムRANS(ランズ)を組み合わせることで、ものづくり現場で実現できる中性子回折法による実験室レベルでの集合組織測定技術の開発に世界で初めて成功しました。今後、小型加速器中性子源を利用した実験室レベルでの日常的な研究開発と、大型中性子実験施設を利用した先端研究開発を組み合わせた新たな研究開発サイクルの構築が、イノベーション創出を実現する革新的な材料開発や製品開発につながると期待されます。
2019/11/14
久保田 正人(多重自由度相関研究グループ)
アルミでコンピュータメモリを省電力化する
~アルミ酸化膜を用いた新しい不揮発メモリの動作メカニズムを解明~
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(理事長 児玉敏雄)物質科学研究センター多重自由度相関研究グループの久保田正人研究副主幹、国立研究開発法人物質・材料研究機構(理事長 橋本和仁)国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の加藤誠一主任研究員、児子精祐外来研究員及び大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(機構長 山内正則 以下、KEKという)物質構造科学研究所の雨宮健太教授らの研究グループは、次世代不揮発メモリの材料として期待されるアモルファスアルミ酸化膜において、半導体メモリのまったく新しい動作メカニズムを説明する電子状態変化を世界で初めて直接観測でとらえました。放射光X線を用いて、アモルファスアルミ酸化膜の構成元素である酸素とアルミニウムの吸収スペクトル測定を行いました。電気が流れる状態(オン)と電気が流れない状態(オフ)における酸素サイトの吸収スペクトル測定を行いました。オン状態では、バンドギャップ内に顕著な電子状態の変化(サブバンド形成)を検出しましたが、オフ状態ではサブバンドは観測されませんでした。これに対して。オン状態とオフ状態では、アルミサイトの電子状態の変化は、ほとんどありませんでした。
2018/10/22
長壁 豊隆(多重自由度相関研究グループ)
数万気圧環境下での中性子3次元偏極解析に世界で初めて成功
~ 完全非磁性の高圧セル開発で実現 圧力下でのスピン配列の解明に期待 ~
国立研究開発法人物質・材料研究機構 先端材料解析研究拠点 中性子散乱グループの寺田典樹 主任研究員と国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 原子力科学研究部門 物質科学研究センター 多重自由度相関研究グループの長壁豊隆 グループリーダーらの研究グループは、完全に非磁性体で作られた高圧力セルを開発し、数万気圧という特殊な環境において物質の電子スピン配列を詳細に解析できる中性子3次元偏極解析実験に世界で初めて成功しました。さらにこの実験により、圧力を加えるとPC用次世代メモリ材料として期待されるマルチフェロイクス材料に変化する物質を見出しました。
2018/6/15
菖蒲 敬久(放射光分析技術開発グループ)
世界初!レーザーコーティング照射条件の施工前予測が可能なシステムを開発
~ レーザー加工の職人技を身近な技術に ~
物質科学研究センター放射光分析技術開発グループの菖蒲敬久研究主幹、高速炉・新型炉研究開発部門 敦賀総合研究開発センター レーザー・革新技術共同研究所の村松 壽晴 GLらが参画する研究グループは、レーザーコーティング加工時に生じる固体金属の溶融・凝固過程を汎用エンジニアリングワークステーションにより評価可能な計算科学シミュレーションコードSPLICE (residual Stress control using Phenomenological modeling for Laser welding repair process In Computational Environment)を世界に先駆けて開発しました。
Newsお知らせ
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- お知らせ
- 2025.5.7 令和8年度 日本原子力研究開発機構博士研究員の募集について
- 2025.5.1 2025年度第2回施設供用利用課題募集のお知らせ
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2025.4.17
燃料電池の未来を拓く
- 触媒層内の"水"を定量的に評価する新手法の確立 - - 2025.3.21 Journal of Applied CrystallographyのTop Cited Articleに選出されました。
- 2025.3.4 リチウムイオン電池のイオン移動度評価に向けたミュオンX線イメージング技術の開発
- 2025.2.10 第8回茨城テックプラングランプリ【熱く、高く、そして優しく賞(提供・富士電機株式会社)】を受賞
- 2024.12.18 JPS Hot Topicsに掲載されました。
- 2024.12.17 OPTICAのNews Releasesで紹介されました。
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2024.11.28
パーコレーション理論を新規量子磁性体で初実証 新しい“静的短距離磁気秩序”を発見
- 次世代磁気デバイスへの活用に期待 - - 2024.11.20 令和 3・4 年度 JRR-3 中性子ビーム利用における 独自利用研究・技術開発報告
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2024.11.7
フッ素のチカラで進化する金属の抽出技術
効率と安全性を両立した新たな抽出法の開発で持続可能な社会の実現に貢献 -
2024.10.31
新開発!超軽量・コンパクト・電源不要の真空トランスファーケース
-ナノ材料・半導体材料開発を加速する超高真空技術の社会実装- - 2024.11.1 2025年度第1回原子力機構施設供用および独自利用の定期募集を開始しました。
- 2024.10.31 令和6年度 日本溶媒抽出学会 奨励賞を受賞
- 2024.10.7 令和6年度 日本原子力研究開発機構 理事長表彰表彰式が行われました。
- 2024.10.3 アクチノイド科学研究グループの本田 充紀マネージャーの紹介記事が「JAEA INNOVATION+」に掲載されました。
- 2024.9.9 令和7年度JRR-3施設供用制度優先利用課題(成果非占有)の募集について
- 2024.8.16 アクチノイド科学研究グループの下条 晃司郎研究主幹がAnalytical Sciences 8 月号のHot Article Awardを受賞しました。
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2024.8.6
カイラリティと電気トロイダルモーメントの結合に基づく 新しい強誘電性発現機構を提案・実証
- 新しい磁性・導電性強誘電体開発の加速に期待 - - 2024.7.30 2024年度日本表面真空学会論文賞を受賞
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2024.7.9
アルミの乱れた構造でコンピュータメモリを省電力化
~微視的な視点から解き明かす、不揮発メモリの機能と構造の関係~ - 2024.6.14 中性子ビーム利用検索システムの運用を開始しました。
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2024.6.12
中性子線とナノテクノロジーを武器に「悪魔のつくった表面」を制御する
―セラミックスの製造技術の課題を克服し、排ガス浄化触媒に新しい未来を! ― - 2024.5.27 一般的な多関節ロボットでハンドリング可能な電動ピペットシステム「ぴぺすま」を5月27日に販売開始!
- 2024.5.20 令和5年度「ベストプレゼンテーション」と「ベストリリース」に物質科学研究センターの成果が選ばれました。
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2024.5.17
中性子で解き明かす「ハイエントロピー合金」を上手に延ばす秘訣
―合金中で炭素が微小な組織の形成を制御していることを発見― -
2024.5.16
シリカがタイヤを高性能化する秘密を中性子と水素のスピンで解明
ー「埋もれた界面」を観測する新技術で、複合材料の高機能化に貢献ー - 2024.5.10 令和7年度博士研究員の募集が開始されました。(締め切り5/29)
- 2024.5.1 2024年度第2回施設供用利用課題募集について
- 2024.5.1 令和6年度夏期実習生の募集を開始しました。
- 2024.4.30 公募情報を更新しました。
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2024.4.12
資源のリサイクル技術を進化させる新たな視点
- 超分子集合体」による希少金属の選択性と抽出速度のコントロール - - 2024.4.8 SPring-8の2024A期のユーザータイムが始まりました。
- 2024.3.22 第8回 応用物理学会 薄膜・表面物理分科会 奨励賞を受賞
- 2024.3.13 日本鉄鋼協会澤村論文賞を受賞
- 2024.3.18 JAEA放射光科学シンポジウム2024を開催しました。
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2024.3.5
量子ビームで「漆黒の闇」に潜む謎を解明
―縄文から始まった”漆技術”を最先端活用へ― - 2024.3.4 化学工学会から第89年会開催についてのプレスリリースが発表されました。
- 2024.3.1 播磨放射光ラボラトリーRI実験棟における初の核燃関係物質の試料分析を実施
- 2024.2.19 JAEA放射光科学シンポジウム2024開催のお知らせ
- 2024.2.16 ものづくり基盤研究会開催のお知らせ
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2024.2.13
大地の謎に迫る!土中に含まれる金属の秘密とは?
分子スケールのシミュレーションと観測が解き明かす土の性質 - 2024.2.9 日本物理学会第29回論文賞受賞
- 2024.1.4 センター長からの新年のご挨拶
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2023.12.14
集まれ!分子
含水溶液中における疎水性物質の集合状態を観察 - 2024.12.1 第57回X線材料強度に関するシンポジウムにて最優秀発表賞を受賞
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2023.12.1
天然素材のセルロースを凍らせるだけ!強い機能性ゲル材料を新たに開発
凍結によるセルロースの結晶相転移と簡易なゲル合成法を発見 - 2023.11.1 2024年度第1回原子力機構施設供用および独自利用の定期募集を開始しました。
- 2023.10.24 超伝導になる電子のカタチが見えた! 量子ビームで描く次世代材料の設計図
- 2023.10.23 画期的な自動減圧ろ過装置「ろかすま」
- 2023.10.16 令和5年度 日本原子力研究開発機構 理事長表彰表彰式が行われました。
- 2023.10.3 SPring-8 2023B期のユーザータイムを開始しました。
- 2023.9.27 R6年度JRR-3施設供用優先利用課題公募を開始しました。
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2023.9.27
$2F29惑星リュウグウが宇宙と実験室で違って$2F92えるのはなぜ?
「宇宙$2FB5化」が$2F54のしるしを隠す - 2023.9.16 階層構造研究グループ 邱 奕寰博士研究員が日本中間子科学会2022年度奨励賞を受賞しました。
- 2023.9.1 播磨放射光ラボラトリーRI実験棟の少量核燃料物質使用施設としての運用が9月1日から開始されました。
- 2023.8.31 フェムト秒レーザー照射で “金属材料が鍛えられる”一瞬の原子の動きを捉えた!
- 2023.8.28 化学工学会第54回秋季大会 注目講演に選出
- 2023.8.23 中性子と水素のスピンでナノプレート状の氷結晶観測に成功
- 2023.8.21 JRR-3の令和5年度の供用運転を開始しました。
- 2023.5.18 強相関材料物性研究グループの金子 耕士研究主幹がJPSJ 2022 Highly Cited Articleを受賞しました。
- 2023.5.2 令和5年度 夏期休暇実習生募集を開始しました。
- 2023.4.28 株式会社三井化学分析センターの皆様がJRR-3見学のため来訪されました。
- 2023.4.27 2023年度第1回目の物質科学研究センターの全体会議を行いました。
- 2023.4.11 アクチノイド科学研究グループの角田 一樹研究員が第17回日本物理学会若手奨励賞を受賞しました。
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2023.4.4
電子源からの電子放出を7倍に増やす表面コーティング技術を開発
電顕や放射光施設の高性能化に期待 - 2022.12.22 階層構造研究グループ 関根由莉奈研究副主幹が日本化学会第11回女性化学者奨励賞を受賞しました。
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2022.12.19
高輝度放射光で解き明かすシリコン酸化膜の成長過程
ーナノデバイスの世界を支配する界面欠陥とキャリア捕獲ー -
2022.12.7
スピンの揺らぎの直接観測に世界で初めて成功
-ナノメートルサイズの磁性を解明し、超小型磁気素子の機能向上へ- - 2022.10.30 階層構造研究グループ 熊田高之研究主幹が2022年度 波紋President Choice賞を受賞しました。
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2022.10.25
全固体電池内のリチウムイオンの動きを捉えることに成功
-全固体電池の研究開発を加速- -
2022.9.27
水に溶けたラジウムの姿を世界で初めて分子レベルで観測
―キュリー夫妻による発見から124年、ラジウムの分子レベル研究の幕開け― -
2022.9.23
素粒子ミュオンにより非破壊で小惑星リュウグウの石の元素分析に成功
-太陽系を代表する新たな標準試料となる可能性- -
2022.9.16
炭素原子膜グラフェンに含まれる微量元素量の計測に成功
ドーピングによるグラフェン機能制御へ大きな進展! - 2022.7.7 日本金属学会会報「まてりあ」2022年7月号の表紙に階層構造研究グループの柴山博士研究員らによる曲げ加工した鉄鋼材料の水素脆性破面のSEM像が掲載されました。
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2022.5.20
高レベル放射性廃液中の元素を光で選別、分別回収の革新的原理を実証
―デザインされた光により、光反応の元素選択性と反応性を両立させることに成功― -
2022.5.15
小さな原子の磁気をもっと小さな原子核の磁気と比べて測定する
-強い磁石の開発に役立つ簡便で正確な「原子の磁気」の新測定法の開発- - 2022.5.11 令和4年度 夏期休暇実習生の募集が開始されました。(応募締切日: 2022年6月15日(水))
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2022.4.7
光と加熱で、金属と絶縁体を行ったり来たり
-高性能な光応答イットリウム化合物薄膜を世界で初めて作製- -
2022.3.31
燃料電池触媒の酸素還元反応活性を2倍以上向上させることに成功
-触媒性能10倍に向け前進 燃料電池のコスト低減に期待- -
2022.3.30
超高密度な磁気渦を示すシンプルな二元合金物質を発見
-次世代磁気メモリへの応用に期待- - 2022.3.18 階層構造研究グループの大澤研究主幹にJAXA はやぶさ2プロジェクトより感謝状が贈られました。
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2021.12.11世界初!元素種を識別して材料のミクロ構造を解析するノイズ耐性の高い新解析法を開発
―将来的なデバイス材料のミクロ構造研究に活路を開く― -
2021.11.25チタン酸バリウムナノキューブの粒径を制御する手法を新たに開発
―環境調和型のプロセスを採用 高性能小型電子デバイスの開発に期待― - 2021.7.26 多重自由度相関研究グループの金子研究主幹がJPSJ 2020 Highly Cited Articleを受賞しました。
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2021.7.26
SPring-8では第5回SPring-8秋の学校の参加者募集中です。
物質科学研究センター菖蒲、冨永、谷田がグループ講習6.応力・ひずみ解析、グループ講習17.ソフト界面の構造解析に講師として参加します。 - 2021.7.12 JRR-3供用運転を開始しました。
- 2021.7.2 令和4年度 博士研究員の募集を開始しました。
- 2021.6.21磁場と圧力でマルチに冷却可能な酸化物新材料 -フェリ磁性電荷転移酸化物におけるマルチ熱量効果の実証―
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2021.5.27
株式会社本田技術研究所が公益財団法人自動車技術会から自動車技術会賞の第71回論文賞を受賞しました。
放射光技術開発グループの菖蒲研究主幹が共同支援した研究です。 - 2021.5.26 階層構造研究グループの上田研究員が2020年度 田中貴金属財団 貴金属に関わる研究助成金萌芽賞を受賞しました。
- 2021.5.20 令和3年度 夏期休暇実習生の募集を開始しました。
- 2021.5.18 階層構造研究グループの関根研究員が第101春季日本化学会年会優秀講演賞(産業)を受賞しました。
- 2021.2.26 研究用原子炉JRR-3が運転再開しました。
- 2021.2.19 異なる金属を混ぜて表面反応を制御する ー合金表面でさびができる過程を解明、腐食に強い材料の開発に貢献ー
- 2021.2.4 廃棄豚骨が有害金属吸着剤に ー廃材を利用した安価で高性能な金属吸着技術を実現ー
- 2020.12.4 半導体が磁石にもなるとき何が起こるのか? ーエレクトロニクスから次世代スピントロニクス社会実現への一歩ー
- 2020.10.30 凍らせて、混ぜて、溶かすだけ 高い強度と成型性を持つ新しいゲル材料を開発 ー身近なバイオマス素材を利用した汎用性の高い材料開発に新展開ー
- 2020.10.8 速い分子だと炭素の網を通り抜ける!? ー酸素がグラフェンをすり抜ける現象を発見ー
- 2020.8.28 放射線に負けない熱電発電の実現に向けて $2014スピン熱電素子が重イオン線に高耐性を持つことを実証$2014
- 2020.7.21 伝導電子スピンの奇妙な「短距離秩序」を世界最高温度で発見 ー新物質Mn3RhSiで新しい金属状態が実現ー
- 2020.3.26 ものづくり現場で中性子線を使った材料分析が可能に ー軽量化を可能にする鋼材開発に新たな道筋ー
- 2019.5.20 JRR-3 将来計画検討委員会(小角・反射率・高分解能装置がカバーする分野)検討結果報告書を公開しました。
- 2019.5.20 JRR-3 将来計画検討委員会(固体物理分野)検討結果報告書を公開しました。
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