材料内部のひずみや集合組織を非破壊で測定
測定対象 : | 金属材料、複合材料 |
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測定試料例: | アルミニウム合金や鉄鋼材料などの構造材料、自動車エンジンやロケットエンジンなどの輸送機械部品、インフラ構造物や発電プラントを模擬した溶接構造物、鉄筋コンクリート などの大型構造体など |
概要
中性子応力測定装置RESAは、角度分散型の中性子回折装置であり、JRR-3ビームホールのT2-1ポートに設置されています。中性子応力測定は、原子間を評点間距離とする物理的な応力計測法であり、中性子の優れた透過能を生かすことで、数mmから数十mmオーダーの材料内部のひずみ・応力状態を非破壊・非接触で測定することができる唯一の測定技術として知られており、種々の機械構造物の残留応力測定を通して、高性能、高信頼性、長寿命化を目指した製品開発や構造設計に大きく貢献しています。一方で、材料強度や破壊メカニズムを議論するうえでは、単に残留応力を測定するだけでなく、弾性ひずみ(応力)や集合組織、転位密度等の微視組織因子を定量的に評価することも重要であります。これらの情報を得るうえで、中性子回折法は有効な手段であり、その優れた透過能から、微視組織因子のバルク平均と力学特性との関係を求めて、材料の変形メカニズムや強度発現メカニズムを議論するのに適しています。このように、中性子回折法は、残留応力に基づく機械部品等の健全性を評価する応力評価研究だけでなく、材料の機械的特性や機能性向上を目指した材料工学研究などへの応用が期待されています。
装置詳細
設置場所 | JRR-3 ビームホール 熱中性子導管(T2-1) |
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用途 | 大型試料応力測定 集合組織測定 |
モノクロメータ | Si (400) Multi-wafer型 縦・横集光 |
波長 | 0.155 nm ~ 0.175 nm |
検出器 | 3He一次元検出器 |
測定体積規定方法 | 入射側:Cdスリット 受光側:ラジアルコリメータ |
測定体積 | 縦方向:2 mm ~ 10 mm 横方向:2 mm ~ 10 mm |
試料ステージ | 面積:550 × 550 mm2 耐荷重:700 kgf 可動範囲:XY ±200 mm Z 300 mm |
オプション | オイラークレードル 小型引張試験機(5 kN)*要相談 |
試料環境
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ラジアルコリメータ(0.5 mm、1.0 mm、2.0 mm、3.0 mm、5.0 mm、10.0 mm)
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オイラークレードル
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小型引張試験機(最大荷重:5 kN)
測定例
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角度分散型集合組識測定技術の高度化
材料加工技術、強度制御技術の高度化に貢献
金属材料における強度と変形(集合組織)には密接な関係があります。RESAを利用することで大型構造材料中の集合組織を非破壊で計測することに成功しました。今後は、変形過程中の集合組織分布計測から企業が抱える材料強度特性評価に貢献することが期待されます。
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負荷下における鉄筋コンクリート中の鉄筋応力分布評価
水和物で囲まれた鉄筋の応力導出に成功
鉄筋コンクリートの強度特性を把握するため、鉄筋に引張負荷をかけた状態におけるコンクリート内部の鉄筋の応力分布を計測し、表面から50mm程度ではコンクリートに応力が完全に分散しないことを明らかにしました。今後はイメージングと融合し、内部欠陥やき裂発生・進展と応力との関係、さらに放射光を組み合わせた接着剤、及びコンクリートそのものの応カの導出を図ることで、鉄筋コンクリートの健全性評価に資するデータ供出を目指します。
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バルクセメンタイトの集合組織解析
新規材料の変形メカニズム解明の可能性が広がる
鉄鋼材料の硬質層の一つであるセメンタイトの単独合金について、変形メカニズムを調査した結果、塑性変形に伴う集合組織の形成など、新たな知見が得られました。
Adachi et al., materials. (2022) -
異形鉄筋による鉄筋コンクリートの応力分布評価
異形鉄筋の応力導出に成功
引張負荷下における鉄筋コンクリート内部応力と鉄筋の表面(節)形状の関係をRESAを用いて調べました。結果、鉄筋の表面(節)形状が鉄筋とコンクリート間の応力保持性能に影響を与えることを実験的に明らかにしました。
小林ら、コンクリート工学年次論文集(2022)
関連資料
「中性子応力測定装置 RESA-1」諸岡 聡、徐 平光 波紋 2021年 31巻 1号 p.9-10
https://doi.org/10.5611/hamon.31.1_9装置利用や課題申請について
詳細はこちら(https://jrr3uo.jaea.go.jp/information/information_04.htm)