中性子線及び放射光を利用した工学材料のひずみ・応力測定技術の開発と応用
階層構造研究グループ | |
氏名 | 菖蒲 敬久 |
---|---|
論文 | https://doi.org/10.3390/qubs8010001 |
原子炉シュラウドでは、溶接近傍に発生する応力腐食割れ(SCC)が長期運転を妨げる課題として挙げられています。近年このSCCが加圧水型原子炉(PWR)においてはシュラウドのみならず配管においても発生することが報告されています。原子炉シュラウドに対してはレーザーピーニング等による補修技術が適用可能ですが、配管となると空間が制限されるために補修技術の適用が簡便ではないことから、SCCを引き起こさないための応力を低減した溶接技術が必要不可欠となります。本研究では、配管中の応力を精密に算出するために、中性子と放射光を組み合わせたハイブリッド計測手法の開発とその応用について検討を行いました。放射光では、高エネルギー放射光X線を利用した2重露光法を活用し、配管より切り出した試験体からの半径及び周方向のひずみを高空間分解能で計測します。一方、中性子では空間分解能は放射光には劣りますが材料に対する強い透過力を活かして半径、周及び軸方向のひずみを計測します。これらのひずみデータを組み合わせることにより、溶接部近傍の精密な応力分布の導出に成功しました。本技術は溶接以外にも様々な実材料に役立てることが出来ます。当該技術を活用することで構造物中の残留応力を計測し、健全性や余寿命評価を実施することで、安全安心な暮らしの実現に貢献してまいります。

Stress distribution around welding. Strong tensile stress that contributes to SCC progression is confirmed around the heat-affected zone (HAZ).