サイト内検索 ネット検索

応力評価技術研究グループ

グループリーダー
鈴木裕士

研究テーマ及び業務

  1. 中性子線及び放射光を利用した工学材料のひずみ・応力測定技術の開発と応用
  2. 中性子線及び放射光を利用したミクロ組織因子の定量評価技術の開発
  3. 実験等に係る安全管理と技術サポート

測定・研究のサポート

  1. 研究用原子炉(JRR-3)における工学材料評価研究のユーザー支援(施設供用対応等)
  2. 残留応力等に関する研究・開発の支援

研究内容

工学材料(機械・構造物を構成している材料で主に金属)の強度・変形特性は、材料中の応力(弾性ひずみ)状態や結晶の大きさと方位分布(集合組織)、また、各構成相の割合などに大きく左右されます。 したがって、これらの因子を評価し制御することで、高性能で安全な機械・構造物の製造と製造コストの削減が可能になります。 応力評価技術研究グループでは、中性子線および放射光を用いて工学材料内部の応力分布や結晶学的情報を測定する技術を開発しており、特に最近は、荷重負荷中や高温/低温中、あるいはそれらの複合環境中での測定技術の高度化に取り組んでいます。 そして、開発した技術を用いて、材料の製造段階や機械構造物の実際の使用環境における、応力や結晶の状態および弾塑性変形過程に関する研究を行っています。 また、原子炉構造物や、建築・土木構造物といった社会インフラ構造物の健全性評価研究等に中性子回折法を応用するなど、安全社会の構築を目指した研究も行っています。

最近の技術開発

○中性子応力測定技術の高度化[22,24]

応力評価技術研究グループでは、研究炉JRR-3に中性子応力測定装置RESA-1(詳細情報)を保有しています。 研究炉から得られる定常連続中性子線から、単色化機構(モノクロメータ)を介して得られる単色中性子線を試料に照射し、そこから生じた回折線の回折角変化を測定することで、材料内部の応力・ひずみを測定します。 試料は三軸方向に移動可能なサンプルステージ上に設置することにより、材料内部の応力マッピングを行いますが、これまでは垂直方向に100mmしか移動できなかったZステージを更新し、最大ストローク300mm、耐荷重500kgfの長ストロークZステージを導入しました。 また、測定環境を整備するだけでなく、入射中性子線の高強度化と波長の選択性向上を目指し、新しいモノクロメータの開発を行っているほか、入射中性子線フライトチューブや検出器など、中性子応力測定装置を構成する光学系アライメントのための調整自動化を進めています。 このように中性子応力測定装置の高度化を進める一方で、材料による中性子線の吸収や部分照射によって生じる見かけのピークシフトの補正方法の検討や、中性子応力測定の精度に関わる無ひずみ状態の格子定数の測定方法の検討など、中性子応力測定の精度向上を目指した研究開発も行っています。


○中性子回折による集合組織測定技術の開発[7]

自動車や航空機等の輸送機器の軽量化には、機器を構成する構造材料の強度発現メカニズムや変形・破壊メカニズムの解明が必要であり、材料の集合組織(結晶方位分布)は、その解明のカギを握っています。 当グループでは、これまでに研究炉JRR-3の定常中性子源による中性子回折装置の角度分散法による集合組織測定技術を開発し、最近ではさらに、J-PARC/MLFのパルス中性子飛行時間法による工学回折装置TAKUMIにおける集合組織測定システムを構築しました。 角度分散法では詳細な精密測定、一方、TAKUMIでは迅速測定が可能であり、現在、両者を効果的に使い分けて、次世代の自動車鋼板材料やマグネシウム合金などの構造材料の研究に応用しています (TAKUMIにおけるパルス中性子集合組織測定システムの開発はJ-PARCセンターおよび総合科学研究機構と協力) 。

最近の研究成果

○鉄筋コンクリート構造の構造力学研究への中性子回折法の応用[6,23]

現代社会においては、都市地震災害に伴うメガリスクを最小限に抑えるために、コンクリート構造物などの建築・土木構造物に対する高い耐震性能が求められています。 鉄筋コンクリートは、圧縮に強いコンクリートと引張に強い鉄筋を相補的に組み合わせた複合材料であり、鉄筋とコンクリート間の付着力が、コンクリート構造物の一体性を確保する上で重要なパラメータとなります。 この付着力は、コンクリートに埋設された鉄筋のひずみ分布を測定することにより評価することができます。 これまでは、ひずみゲージを用いて測定されてきましたが、ひずみゲージ周りの付着劣化によって、正確な付着特性を評価することが困難とされてきました。 一方、中性子応力測定技術は、中性子線の回折現象を応用した応力・ひずみ測定技術であり、材料深部の応力・ひずみを非破壊・非接触で測定できる特長を有します。 応力評価技術研究グループでは、世界で初めて鉄筋コンクリートの構造力学研究に中性子回折法を応用し、普通強度コンクリートに埋設された鉄筋について、十分な精度でひずみ分布測定が可能であることを実証するとともに,コンクリートのひび割れや鉄筋腐食に伴う付着劣化の評価を可能にしました.このように、中性子回折法の応用は、鉄筋コンクリートの構造力学研究に新たな知見を与えるものと期待されます。

本成果はカナダのリサーチ会社「Advances In ENGINEERING」により注目論文として選ばれました。


グループメンバー

鈴木 裕士
盛合 敦
井川 直樹
徐 平光
下条 豊
諸岡 聡
菖蒲 敬久(兼務)
美留町 厚(兼務)
相澤 一也(兼務)
ステフアヌス ハルヨ(兼務)
川崎 卓郎(兼務)

査読付学術論文(2014 - 2015)

1)Investigation of elastic deformation mechanism in as-cast and annealed eutectic and hypoeutectic Zr-Cu-Al metallic glasses by multiscale strain analysis, H. Suzuki, R. Yamada, S. Tsubaki, M. Imafuku, S. Sato, T. Watanuki, A. Machida, J. Saida, Metals, 6, 12 (2016).
2)Crystal structures and magnetic properties of nickel chain compounds PbM2Ni6Te3O18(M=Mn, Cd), Y. Doi, R. Suzuki, Y. Hinatsu, K. Kodama, N. Igawa, Inorganic Chemistry, 54,10725-10731 (2015).
3)Tensile deformation behavior of hydrogen charged ultrahigh strength steel studied by in situ neutron diffraction, P.G. Xu, J. Yin, S.Y. Zhang, Acta Metall. Sinica, 51, 1297-1305 (2015) (in Chinese).
4)Neutron diffraction study of 1D quantum spin system Li2ZrCuO4 with incommensurate magnetic structure, Y. Yasui, N. Igawa, K. Kakurai, JPS Conf. Proc., 8, 034012 (2015).
5)Local Lattice Distortion Caused by Short-range Charge Ordering in Transition Metal Oxides, K. Kodama, N. Igawa, S. Shamoto, K. Ikeda, H. Ohshita, N. Kaneko, T. Otomo, K. Suzuya, A. Hoshikawa, and T. Ishigaki, JPS Conf. Proc., 8, 034002, (2015).
6)Application of neutron stress measurement to reinforced concrete structure, H. Suzuki, K. Akita, M. Kanematsu, A. Tasai, Y. Hatanaka, N. Tsuchiya, S. Bae, S. Shiroishi, S. Sakurai, T. Kawasaki, S. Harjo, JPS Conf. Proc., 8, 031006, (2015).
7)Progress in bulk texture measurement using neutron diffraction, P.G. Xu, S. Harjo, T. Ito, Y. Morii, W. Gong, H. Suzuki, K. Akita, T. Suzuki, Y. Tomota, L. Lutterotti, JPS Conf. Proc., 8, 031022, (2015).
8)Crystal structure and electron density distribution analyses of NdxCe1-xO2-δ for electrolyte by Rietveld/ maximum entropy method, T. Taguchi, N. Igawa, A. Birumachi, H. Asaoka, S. Miwa and M. Osaka, e-J. Surface Sci. Nanotech., 13, 339-342, (2015).
9)Nuclear and electron density distributions of LiMn2O4 analyzed by combination of Rietveld/ maximum entropy method, N. Igawa, K. Kodama, A. Birumachi and T. Taguchi, e-J. Surface Sci. and Nanotechnol., 13, 247-252 (2015).
10)マルチプローブを用いた安定化ジルコニアのアニールによる結晶、局所構造への影響の研究, 伊藤孝憲, 森 昌史, 犬飼 学, 仁谷浩明, 山本 孝, 宮永崇史, 井川直樹, 北村尚斗, 石田直哉, 井手本 康, Photon Factory News, 33, 18-24 (2015).
11)Inter-atomic force constants of BaF2 by diffuse neutron scattering measurement, T. Sakuma, Makhsun, R. Sakai, Xianglian, H. Takahashi, K. Basar, N. Igawa and S. A. Danilkin, AIP Conf. Proc., 1656, 020002, (2015).
12)Effect of annealing on crystal and local structures of doped zirconia using experimental and computational methods, T. Itoh, M. Mori, M. Inukai, H. Nitani, T. Yamamoto, T. Miyanaga, N. Igawa, N. Kitamura, N. Ishida and Y. Idemoto, J. Phys. Chem. C, 119, 8447-8458, (2015).
13)Internal stress distribution for generating closure domains in laser-irradiated Fe-3%Si(110) steels, K. Iwata, M. Imafuku, T. Suzuki, T. Shobu, H. Orihara, Y. Sakai, K. Akita, S. Ohya and K. Ishiyama, J. Appl. Phys., 117, 17A910 (2015).
14)Orientation relationship between α-phase and high-pressure ω-phase of pure group IV transition metals, N. Adachi, Y. Todaka, H. Suzuki and M. Umemoto, Scripta Mater., 98, 1-4 (2015).
15)X-ray line profile study on shot/laser-peened stainless steel, M. Kumagai, K. Akita, M. Imafuku and S. Ohya, Advanced Mater. Research, 996, 39-44, (2014).
16)Relaxation behavior of laser-peening residual stress under tensile loading investigated by X-ray and neutron diffraction, K. Akita, K. Hayashi, K. Takeda, Y. Sano, H. Suzuki, A. Moriai and S. Ohya, Mech. Eng. J., 1, SMM0029 (2014).
17)中性子回折による残留応力計測, 秋田貢一, 検査技術, 19, 62-66 (2014).
18)Estimation of force constants of Al from diffuse neutron scattering measurement, Makhsun, T. Hashimoto, T. Sakuma, H. Takahashi, O. Kamishima, N. Igawa and S. A. Danilkin, J. Phys. Soc. Jpn., 83, 074602 (2014).
19)Workhardening and the microstructural characteristics of shot- and laser-peened austenitic stainless steel, M. Kumagai, K. Akita, M. Imafuku and S. Ohya, Mater. Sci. Eng. A, 608, 21-24 (2014).
20)Local structural analysis by using atomic pair distribution function on mixed valence compound LiMn2O4, K. Kodama, N. Igawa, S. Shamoto, K. Ikeda, H. Oshita, N. Kaneko, T. Otomo, K. Suzuya, A. Hoshikawa and T. Ishigaki, JPS Conf. Proc., 3, 013012 (2014).
21)Weak ferromagnetic ordering disordered by Rh3+ ions for LaCo0.8Rh0.2O3, S. Asai, R. Okazaki, I. Terasaki, Y. Yasui, N. Igawa and K. Kakurai, JPS Conf. Proc., 3, 014034 (2014).
22)Influence of beam divergence on pseudo-strain induced in time-of-flight neutron diffraction, H. Suzuki, S. Harjo, J. Abe and K. Akita, Mater. Sci. Forum, 777, 105-111 (2014).
23)Measuring strain and stress distributions along rebar embedded in concrete using time-of-flight neutron diffraction, H. Suzuki, K. Kusunoki, Y. Hatanaka, T. Mukai, A. Tasai, M. Kanematsu, K. Kabayama and S. Harjo, Meas. Sci. and Technol., 25, 025602 (2014).
24)Effect of neutron attenuation on strain measurement with large gauge volume, H. Suzuki, J. Katsuyama and K. Akita, Mater. Sci. Forum, 772, 33-38 (2014).

著書・解説(2014 - 2015)

1)伊藤孝憲, 井川直樹, 本間徹生, 放射光X線,中性子を用いた固体酸化物型燃料電池材料の評価, SPring-8の高輝度放射光を利用したグリーンエネルギー分野における電池材料開発, シーエムシー出版, 104-112 (2014).

招待講演(2014 - 2015)

1)中性子回折による金属材料バルク集合組織測定技術の応用進展,徐 平光,日本鉄鋼協会第171回春期講演大会,シンポジウム「X線、中性子線による金属組織解析法の進歩」,東京,2016年3月(依頼講演)
2)中性子・放射光X線回折による応力測定技術とその応用,秋田貢一,NDEシンポジウム2015 ―構造健全性と非破壊評価―,東京,2015年11月(招待講演)
3)中性子および放射光を用いた応力評価,秋田貢一,日本材料学会第1回材料WEE,京都,2015年10月(基調講演)
4)Neutron Engineering Application for Structural Engineering of Reinforced Concrete Structure, H. Suzuki, MECA SENS 8, Grenoble, France, Sep., 2015. (Invite)
5)Stress Measurements using Synchrotron X-ray and Neutron Diffraction, K. Akita, 11th Int. Conf. on Durability Analysis of Composite Systems (Duracosys2014), Tokyo, Japan, Sep., 2014. (Keynote)

外部資金(2014 以降)

1)H28-30, 科研費基盤研究(C)
研究題目名:中性子回折による電池材料中のイオン拡散と局所乱れの相関の解明
2)H28-29, 科研費若手研究(B)
研究題目名:軟質分散粒子と転位の引力型相互作用の可視化技術の構築と発現機構の解明
3)H27-29,科研費基盤研究(C)
研究課題名:中性子回折法の鉄筋コンクリート構造力学研究への展開
4)H26-28,原子力基礎基盤戦略研究イニシアティブ
研究課題名:原子力発電機器における応力改善工法の長期安全性評価のための基盤技術開発”
5)H25-26,科研費挑戦的萌芽研究
研究課題名:大強度パルス中性子による疲労荷重下の機械内部応力測定システムの開発
6)H24-26, 科研費基盤研究(C)
研究課題名:中性子を用いた燃料電池用固体電解質中のプロトンの動的挙動の解明
7)H24-26,科研費基盤研究(C), (代表者:黒田雅利,熊本大学)
研究課題名:ショットピーニングによる疲労破壊制御技術に関する研究
8)H23-26,科研費基盤研究(A), (代表者:才田淳治,東北大学)
研究課題名:局所不均質構造金属ガラスの応力状態と変形および動的構造遷移機構

機構内競争資金(2014 以降)

1)平成27年度萌芽研究開発制度
研究題目名:中性子回折法による鉄筋コンクリート構造におけるトラス・アーチ理論の検証

Copyright © Japan Atomic Energy Agency. All Right Reserved.