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階層構造研究グループ

グループリーダー
熊田高之

研究テーマ及び業務

  1. 核偏極試料と偏極中性子を用いた多成分複合材料の構造研究
  2. 日米協力事業に基づく中性子回折研究
  3. 多孔性酸化チタン触媒において形成される構造のスケール依存性
  4. 抽出錯体溶液がつくる階層構造とダイナミクスの解明
  5. 中性子線を用いた高分子ゲル材料の機能化に関する研究
  6. 中性子非弾性散乱による機能性高分子の構造とダイナミクスの研究

研究内容

階層構造研究グループは中性子・X線小角散乱法や中性子非弾性散乱法を用いて、高分子・溶液・生体関連物質などのソフトマテリアルを中心とした物質のナノからマイクロメータースケールの階層にわたる構造とそのダイナミクスを調べることにより、それらの機能発現メカニズムの解明を目指しています。 実験は、装置管理を行っている研究用原子炉JRR-3にある2台の中性子小角散乱装置(SANS-J, PNO)の他、J-PARCを含む国内外の中性子・放射光施設を用いて行っています。 また、装置利用者のニーズに合わせた小角散乱装置の改良も進めており、特に近年ではソフトマテリアルの主成分である水素の核スピンと中性子スピン自由度を用いて構造解析を行うスピンコントラスト法の利用を積極的におこなっております。 本手法は、従来の重水素ラベルによる方法と異なり、試料を重水素化することなく多成分複合材料における構造を成分毎に決定できるものであり、中性子施設利用の”敷居“を下げる技術として注目を集めているものです。

最近の研究成果

○放射線照射試料の動的核偏極機構の解明

スピンコントラスト中性子散乱実験において、磁気モーメントが非常に小さい水素核スピンを低温・強磁場だけで偏極するのは困難です。 そこで試料中の電子スピンを低温・強磁場下で偏極した後、磁気共鳴法を用いて周囲の水素核スピンに偏極移動させる動的核スピン偏極(DNP)が用いられます。 我々は、放射線照射により固体中に発生した電子スピン(フリーラジカル)を用いたDNP機構を精査したところ、放射線照射による直接的な分子鎖切断によって生じたフリーラジカルと、それによって生じた不安定化学種による引抜反応によって生じたフリーラジカルが対となることで核スピンへの偏極移動を引き起こしていることを判明しました。


○日米協力事業に基づく中性子回折研究

オークリッジ国立研究所に機構が設置した中性子回折装置WANDのアップグレードを実施しています。 2015年には新たな二次元検出器を導入するフェーズ2が開始されました。 アップグレードされたWANDを用いることにより、機能的な除染材が開発されたり水分子の配置の秩序化条件が新たに見出されたりする等の成果が得られています。


多孔性酸化チタン触媒において形成される構造のスケール依存性

物質の構造に関して、中性子小角散乱の波数(q)領域(0.03 ≤ q [nm-1] ≤ 1)に相当するメソスケールを中心に観測範囲を拡張し、高次構造を広く捉える研究を進める中で、最近では触媒機能を有する酸化チタン(TiO2)の多孔体構造について結晶構造から製法によって異なるナノ~ミクロンオーダーまでの構造を6桁にわたり観察しました。 また機能を高めるために少量のドープ物質を添加したTiO2多孔体の散乱は、ドープ物質の添加がないTiO2多孔体からの散乱に比べて特定のq領域の散乱強度の変化(増加)に寄与する傾向を見出し、その変化からドープ物質の実空間中での分布を割り出す解析を進めています。


○抽出錯体溶液がつくる階層構造とダイナミクスの解明

溶媒抽出によって金属イオンを分離する際につくられる、抽出錯体に関する研究を進めています。 溶媒抽出は再処理においてウランやプルトニウムを分離する際に用いる重要なプロセスですが、それ以外にも希少価値の高い金属イオンや有害物質の分離にも使われる汎用性の高い方法です。 溶液中には金属イオン、有機分子、酸、水分子などが含まれていますが、これらの成分が自己組織化することによりナノスケールの複合構造をつくる場合があることがわかってきました。 これまでに、最先端の中性子線や放射光を利用した分析を進めたところ、このナノ構造には、これまで分離することが難しかったイオン種を選択的に認識したり、その分離効率を向上させたりする機能を付与できることが示唆されています。 ナノ構造の詳細な理解とその特性の解明を進めることで、その知見を核燃料再処理や分離核変換などの原子力科学技術の発展に波及させます。


中性子線を用いた高分子ゲル材料の機能化に関する研究

中性子線やX線を利用した、高分子ゲル材料の機能化を目的とした研究を行っています。 高分子ゲル中では高分子鎖や水が絡まり合い、ナノオーダーの特異的な微細構造を形成しています。 それらはゲルの性質に大きく関与しますが、構造を形成する各成分のナノ構造を評価することは困難でした。 最近、コントラスト変調中性子小角散乱を用いることにより、多成分系から成る高分子ゲル微粒子において、成分毎のナノ構造を明らかにしました。 高分子ゲル材料における微細構造を明らかにすると共に、得られた知見を基にした材料の機能化を進めています。


中性子非弾性散乱による機能性高分子の構造とダイナミクスの研究

機能性高分子の立体構造情報に基づいて、ターゲット分子との相互作用や分子間相互作用を予測するためには、構造変化や揺らぎを調べる必要があります。 中性子非弾性散乱や分子シミュレーションを用いて、構造揺らぎを調べます。 また、中性子非弾性散乱を活用した食品物性解析を行います。 特に、ガラス転移や水和状態の解析を通じて、食品のミクロ構造とマクロの物性の関係を調べ、食品の機能特性を決める分子機構を解明します。


Papers

1)Small-angle Neutron Scattering Study of Specific Interaction and Coordination Structure Formed by Mono-acetyl Substituted Dibenzo-20-crown-6-ether and Cesium Ions, Ryuhei Motokawa, Tohru Kobayashi, Hitoshi Endo, Takashi Ikeda, Tsuyoshi Yaita, Shinichi Suzuki, Hirokazu Narita, Kazuhiro Akutsu, and William T. Heller, in press, J. Nucl. Sci. Technol., (2015).
2)Frequency-resolved optical gating for characterization of VUV pulses using ultrafast plasma mirror switching,R. Itakura, T. Kumada, M. Nakano and H. Akagi, Optics Exp., 23, 10914 (2015).
3)Isotope-selective ionization utilizing field-free alignment of isotopologues with a train of femtosecond laser pulses,H. Akagi, T. Kasajima, T. Kumada, R. Itakura, A. Yokoyama, H. Hasegawa and Y. Ohshima, Phys. Rev. A, 91, 063416 (2015).
4)Non-thermal effects on femtosecond laser ablation of polymers extracted from the oscillation of time-resolved reflectivity, T. Kumada, H. Akagi, R. Itakura, T. Otobe, M. Nishikino and A. Yokoyama, Appl. Phys. Lett., 106, 221605-1-5 (2015).
5)Dynamics of spallation during femtosecond laser ablation studied by time-resolved reflectivity with double pump pulse, T. Kumada, T. Otobe, M. Nishikino, N. Hasegawa and T. Hayashi, Appl. Phys. Lett., 108, 011102 (2015).
6)Thermosetting polymer for dynamic nuclear polarization: Solidification of an epoxy resin mixture including TEMPO, Y. Noda, T. Kumada, D. Yamaguchi and S. Shamoto, Nucl. Instr. Methods in Phys. Research A, 776, 8-14 (2015).
7)Mesoscopic Structures of Vermiculite and Weathered Biotite Clays in Suspension with and without Cesium Ions, Ryuhei Motokawa, Hitoshi Endo, Shingo Yokoyama, Shotaro Nishitsuji, Tohru Kobayashi, Shinichi Suzuki, and Tsuyoshi Yaita, Langmuir, 30, 15127-15134, (2014).
8)Mesoporous Silica Particles as Topologically Crosslinking Fillers for Poly(N-isopropylacrylamide) Hydrogel, Nobuyoshi Miyamoto, Kotaro Shimasaki, Kosuke Yamamoto, Morino Shintate, Yuichiro Kamachi, Bishnu P. Bastakoti, Norihiro Suzuki, Ryuhei Motokawa, and Yusuke Yamauchi, Chem. –Eur. J., 20, 14955-14958, (2014).
9)Collective Structural Changes in Vermiculite Clay Suspensions Induced by Cesium Ions, Ryuhei Motokawa, Hitoshi Endo, Shingo Yokoyama, Shotaro Nishitsuji, Tohru Kobayashi, Shinichi Suzuki, and Tsuyoshi Yaita, Sci. Rep., 4, 6585(1-6), (2014).
10)Neutron diffraction of ice in hydrogels, Y. Sekine, T. Ikeda-Fukazawa, M. Aizawa, R. Kobayashi, S. Chi, J. A. Fernandez-Baca, H. Yamauchi and H. Fukazawa, J. Phys. Chem. B, 118, 13453-13457 (2014).
11)Dependence of structure of polymer side chain on water structure in hydrogels, Y. Sekine, H. Takagi, S. Sudo, Y. Kajiwara, H. Fukazawa and T. Ikeda-Fukazawa, Polymer, 55, 6320-6324 (2014).
12)Temperature and composition phase diagram in the iron-based ladder compounds Ba1-xCsxFe2Se3, T. Hawai, Y. Nambu, K. Ohgushi, F. Du, Y. Hirata, M. Avdeev, Y. Uwatoko, Y. Sekine, H. Fukazawa, J. Ma, S. Chi, Y. Ueda, H. Yoshizawa and T. Sato, Phy. Rev. B, 91, 184416 (2015).
13)Neutron diffraction of ice and water in hydrogels, Y. Sekine, R. Kobayashi, S. Chi, J. A. Fernandez-Baca, K. Suzuya, F. Fujisaki, K. Ikeda, T. Otomo, T. Ikeda-Fukazawa, H. Yamauchi and H. Fukazawa, JPS Conf. Proc., 8, 033009 (2014).
14)Properties of ferroelectric ice, H. Fukazawa, M. Arakawa, H. Yamauchi, Y. Sekine, R. Kobayashi, Y. Uwatoko, S. Chi and J. A. Fernandez-Baca, JPS Conf. Proc., 8, 033010 (2015).
15)Femtosecond laser ablation dynamics of fused silica extracted from oscillation of time-resolved reflectivity, T. Kumada, H. Akagi, R. Itakura, T. Otobe and A. Yokoyama, J. Appl. Phys., 115, 103504 (2014).
16)Non-thermal effects on femtosecond laser ablation of polymers extracted from the oscillation of time-resolved reflectivity, T. Kumada, H. Akagi, R. Itakura, T. Otobe, M. Nishikino and A. Yokoyama, Appl. Phys. Lett., 106, 221605 (2015).
17)Local dynamics coupled to hydration water determines DNA-sequence dependent deformability, H. Nakagawa, Y. Yonetani, K. Nakajima, S. Ohira-Kawamura, T. Kikuchi, Y. Inamura, M. Kataoka and H. Kono, Phys. Rev. E., 90, 022723 (2014)
18)Hierarchical structure in microbial cellulose: What happens during the drying process, Y. Zhao, D. Yamaguchi, S. Koizumi and T. Kondo, Eur. Phys. J. E, 37, 129 (2014).

Books

1)H. Nakagawa and M. Kataoka, “Protein hydration and dynamics”, RADIOISOTOPES, 64, 647-659 (2015)
2)H. Nakagawa, “Hydration and dynamics of bio-molecule studied by incoherent neutron scattering and molecular simulation”, Hamon, 25, 131-135 (2015) (Review) (in Japanese).
3)H. Nakagawa and M. Kataoka, “Protein hydration and function”, Reitou, 90, 569-573 (2015) (Review) (in Japanese).

Patent

1)Y. Sekine, H. Fukazawa, K. Akiyoshi, Y. Sasaki and S. Sawada, “Metal ferrocyanide-polysaccharide complex”, Japanese Patent Application 2014-021082 (2014.2.6).
2)放射性有物質の処理方法、矢板毅、鈴木伸一、元川竜平、宮崎有史、小林徹、江口勇司、脇屋武司、特開2015−185566
3)セシウムの吸着材、セシウムの吸着物質及びセシウムの吸着材を用いた放射性セシウム含有物質の処理方法、元川竜平、矢板毅、鈴木伸一、小林徹、宮崎有史、江口勇司、脇屋武司、特開2015−51397

招待講演

1)SANS and EXAFS Studies of Hierarchical Structure Assembled by Coordination Species in Biphasic Solvent Extraction, Ryuhei Motokawa, Pacifichem 2015 (Session #97), Honolulu, United States (December 2015)(Invited Talk)
2)バーミキュライト及び風化黒雲母懸濁液のナノ-メソ構造とセシウムイオンの吸着挙動 -X線・中性子小角散乱法で明らかにできること-、元川竜平、2015年度日本地球化学会第62回年会(日本地球化学会)、横浜、平成27年9月16日(招待講演)
3)Hierarchical Structure Assembled by Coordination Species in Biphasic Solvent Extraction, Ryuhei Motokawa, Actinide XAS 2014, Schloss Bottstein, Switzerland (May 2014)(Invited Talk)
4)水和と共役した生体分子のダイナミクスと機能発現、中川洋、機能物性融合科学研究会シリーズ2 ソフトダイナミクス、柏、平成27年4月(招待講演)
5)Protein dynamics and hydration studied by inelastic neutron scattering and molecular dynamics simulation、Hiroshi Nakagawa, 2nd Asia-Oceania Conference on Neutron Scattering, Sydney, Australia, (July 2015) (Invited Talk)

外部資金リスト

1)H28-H29 科研費・若手研究B (研究代表:関根由莉奈)
研究課題名:磁化バイオミネラルによる放射性Srイオン吸着材料の開発
2)H28-H31 科研費・基盤研究B (研究代表:中川洋)
研究課題名:食品の水和構造の可視化と分子運動性の解析による、水分活性が意味する水和状態の解明
3)H28-H30 科研費・基盤研究B (研究分担:元川竜平、研究代表:遠藤仁)
研究課題名:X線・中性子散乱による粘土鉱物中における核種のメゾスコピックスケール収着挙動評価
4)H27-H29 科研費・基盤研究C (研究代表:熊田高之)
研究課題名:軟X線レーザー時間分解小角散乱法によるフェムト秒レーザーアブレーションの研究
5)H26-H29 科研費・基盤研究B (研究代表:元川竜平)
研究課題名:再処理過程で自発的につくられる抽出錯体溶液の階層構造とそのダイナミクスの研究
6)H26-H28 科研費・基盤研究B (研究分担:元川竜平、研究代表:成田弘一)
研究課題名:協同効果を利用した新規ロジウム抽出系開発及びそのメカニズム解析
7)H26-H28 科研費・挑戦的萌芽研究 (研究代表:中川洋)
研究課題名:干し芋の保存性と嗜好性は両立できるか?~食品の品質を決める水和とガラス転移~
8)H26-H29 JSTさきがけ (研究代表:中川洋)
研究課題名:中性子散乱と計算機科学の融合による蛋白質のドメインダイナミクスの解析
9)H26-H28 東レ科学技術研究助成 (研究代表:中川洋)
研究課題名:柔らかな生体分子の動的構造を決定するための中性子・X線散乱解析法の開発
10)H26-H28 JST原子力基礎基盤戦略研究イニシアチブ日英原子力共同研究プログラム (研究分担:関根由莉奈、研究代表:大貫敏彦)
研究課題名:環境中放射性核種浄化のための新規な修復材料の開発

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