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放射光分析技術研究グループ

グループリーダー
岡本芳浩
マネージャー
菖蒲敬久

研究テーマ及び業務

  1. セシウムフリー鉱化法に基づく汚染土壌の除染と廃棄物の再利用を両立させる技術の確立
  2. 放射光を利用した工学材料のひずみ・応力測定技術の開発と応用
  3. 放射光計測技術(X線回折法、小角散乱法、イメージング法など)を用いた材料評価技術の開発と応用
  4. 大型放射光施設(SPring-8)および高エネルギー加速器研究機構における施設の保守管理とユーザー支援(施設供用対応等を含む)

研究内容

放射光分析技術開発グループは平成28年4月に結成された新しいグループです。グループのミッションは、JAEAが所有する放射光ビームラインの整備と分析技術の開発です。大型放射光施設SPring-8のBL22XUおよびBL23SU、高エネルギー加速器研究機構フォトンファクトリーのBL-27ステーションを維持管理するとともに、これらの施設を利用して福島復興研究、原子力分野の基礎基盤研究に貢献することを目標としています。

福島復興研究では、放射性セシウムによって汚染した土壌の処理法として、セシウムフリー鉱化法による汚染土壌の除染と再利用を両立する処理プロセスの開発を進めています。原子力分野の研究では、放射光X線を用いた材料内部応力/ひずみ. 評価法とその応用により、材料研究の世界に放射光分析技術を導入して成果をあげています。また、廃棄物発生量低減を目指したガラス固化処理技術の高度化に、放射光分析技術を駆使して貢献しています。これらのグループ独自の研究のほかにも、放射光ビームラインを維持しながら、JAEA内外の研究グループの支援を通して、福島復興研究と原子力分野の基礎基盤研究に、幅広く貢献しています。


最近の研究成果

○セシウムフリー鉱化法に基づく汚染土壌の除染と廃棄物の再利用を両立させる技術確立の研究

福島第一原発から放出された放射性セシウムの大部分は土壌中に強く固定されていて、簡単には除去することができません。このため、福島で発生したセシウム汚染土壌の処分が大きな社会的負担になっています。私達のグループではその減容化と再利用に繋がるセシウムフリー鉱化法の開発を行っています。この手法では、アルカリ塩を混ぜて加熱処理を施すことで汚染土壌を別の鉱物に変えると共にセシウムを土壌から抜き取ることで放射能を減らし、最終的にその鉱物を産業利用することで汚染土壌の減容化を図ることを目指しています。すでに、福島の風化黒雲母を用いたモデル試験では1万分の1気圧の低い圧力のもとで塩化ナトリウム(食塩)と融雪剤に使われる塩化カルシウムの混合塩を混ぜて650℃の加熱処理を行うことで、大部分のセシウムが除去されたことを明らかにしています。今後さらに、土壌からのセシウム除去のメカニズムを明らかにし、効率的な除染と廃棄物である土壌を有用な鉱物材料に変換する技術の確立を目指しています。


○放射光を利用した材料内部イメージング/ひずみの融合時分割測定手法開発

レーザー溶接中材料内部イメージング(上)、
及び回折リング(下)の時間変化

2次元検出器とJAEAが独自に開発したスパイラルスリット、さらにCCDカメラを組み合わせることにより、材料内部の様子(イメージング)とひずみ(回折)をリアルタイムで計測する技術を開発しました。図は、SPring-8内JAEA専用ビームラインBL22XUで測定したアルミニウム板材レーザー溶接中の時間変化です。上図のイメージング(白黒の図)では、0secよりレーザーを照射し、40secではアルミニウムの一部が溶けだし、金属中に内在していた不純物や表面酸化被膜からのバブルや固液界面が発生している様子、レーザー照射終了後の55sec、90secではアルミニウム内部がえぐられた様子が20msecの時間分解能で観測されました。一方、下図の回折(カラーの図)に示すように、各時間における回折線の計測に成功し、40secでは0secで見られた回折リングが完全に消えました。これはスパイラルスリットにより局所内部だけからの回折リングを計測できたことを意味しており、本手法を利用することにより、リアルタイムで局所のひずみ/応力評価が可能です。今後、本手法を発展させることにより、これまで測定することができなかった実環境時分割計測が可能となり、産業利用における動的な応力評価からの変形、破壊メカニズムの解明や、近年注目されている金属光造形への適用が期待されます。


○放射光継続技術を用いた材料評価研究: ガラス固化技術高度化への貢献

使用済み燃料の再処理などによって発生する高放射性廃液を処分には、ベースとなるガラスに様々な種類の元素(廃液成分)を溶け込ませて、ガラス固化体を製造する技術が使用されます。固化体に含まれる元素の数は30以上にもおよび、これらの元素について、ガラスの中における化学状態、特に安定な状態で入っていることを確かめる必要があります。ガラス中にごくわずかに含まれる成分の状態を明らかにするのは大変困難ですが、それを可能にするのが、放射光で発生する強力なX線を使った分析です。SPring-8における高エネルギーXAFSやKEKにて技術開発を進めているイメージングXAFS(図参照)などの技術を駆使して、ガラス中の対象元素の分析を、核燃料サイクル工学研究所のガラス固化技術開発部と連携しながら進めています。

私たちが取り組んでいるのは、単なる「確かめる分析」だけではありません。製造されるガラス固化体に、今よりもたくさんの廃液成分をより安定に溶け込ませることができないかという、将来へ向けた研究開発にも放射光分析技術を使い貢献しています。この研究開発が進めば、ガラス固化体の発生本数が減りますので、廃棄物の減容化につながります。


○大型放射光施設(SPring-8)および高エネルギー加速器研究機構における施設の保守管理とユーザー支援(施設供用対応等を含む)


グループメンバー

岡本芳浩(東海地区)リーダー
菖蒲敬久(播磨地区)マネージャー
下山 巌(東海地区)研究主幹
斎藤祐児(播磨地区)研究副主幹
本田充紀(東海地区)研究副主幹
塩飽秀啓(播磨地区)研究副主幹(兼務)
千葉慎哲(東海地区)技術開発協力員

査読付学術論文リスト(2014 - 2015)

1)Internal Stress Measurement of Weld Part Using Diffraction Spot Trace Method, K. Suzuki1, T. Shobu, A. Shiro and S. Zhang, Materials Science Forum, 777, 155-160,(2014).
2)Evaluation of ductile damage progress of aluminum single crystal with prior activity of single slip system under tensile loading by using synchrotron white X-ray, J. Shibano, K. Kajiwara, T. Tsukamoto, H. Kawai, S. Miura,S. Zhang, T. Shobu, and M. Kobayashi, Materials Science Forum, 777, 176-181(2014).
3)Microstructure evolution and hardness change in ordered Ni3V intermetallic alloy by energetic ion irradiation, A. Hashimoto, Y. Kaneno, S. Semboshi, H. Yoshizaki, Y. Saitoh, Y. Okamoto, A. Iwase, Nucl. Instr. Meth. Phys. Res. B, 338, 72-76 (2014) .
4)粘土鉱物に吸着したセシウムの水相における移行現象, 岡本芳浩, 大杉武史, 塩飽秀啓, 赤堀光雄, 日本原子力学会和文誌, 13, 113-118 (2014).
5)Labeling co-sensitizer dye for XPS quantification in coadsorption dye-sensitized solar cells, M. Honda, M. Yanagida, L. Han, K. Miyano, e-JSSNT (Internet), 12, 63 – 67 (2014).
6)Low-pressure sublimation method for cesium decontamination of clay minerals, I. Shimoyama, N. Hirao, Y. Baba, T.Izumi, Y. Okamoto, T. Yaita, S. Suzuki, Clay Sci., 18, 71 – 77 (2014).
7)A Polarization rule on atomic arrangements of graphite-like boron carbonitride, I. Shimoyama, Y. Baba, T.Sekiguchi, Carbon, 71, 1 – 10 (2014).
8)Structure of ultra-thin silicon film on HOPG studied by polarization-dependence of X-ray absorption fine structure, Y.Baba, I. Shimoyama, N. Hirao, T. Sekiguchi, Chem. Phys. Lett., 594, 64 – 68 (2014).
9)Modification of surface hardness for dual two-phase Ni3Al-Ni3V intermetallic compound by using energetic ion beam and subsequent thermal treatment, H. Yoshizaki, A. Hashimoto, Y. Kaneno, S. Semboshi, Y. Saitoh, Y. Okamoto, A. Iwase, Nucl. Instr. Meth. Phys. Res., B. 345, 22-26 (2015).
10)Contracted interlayer distance in graphene/sapphire heterostructure, S. Entani, L. Y. Antipina, P. V. Avramov, M. Ohtomo, Y. Matsumoto, N. Hirao, I. Shimoyama, H. Naramoto, Y. Baba, P. B. Sorokin, S. Sakai, Nano Res., 8, 1535 – 1545 (2015).
11)Influence of configuration at dopant sites on catalytic activity of phosphorus-doped graphite, I. Shimoyama, T. Hakoda, A. Shimada, Y. Baba, Carbon, 81, 260 – 271 (2015).
12)A Fluorescence XAFS measurement instrument in the Soft X-ray region toward observation under operando conditions, M. Honda, Y. Baba, I. Shimoyama, T. Sekiguchi, Rev. Sci. Instr., 86, 035103_1 - 035103_5 (2015).
13)X-ray Absorption Fine Structure at the Cesium L3 Absorption Edge for Cesium Sorbed in Clay Minerals, M. Honda, I. Shimoyama, Y. Okamoto, Y. Baba, S. Suzuki, T. Yaita, J.Phys.Chem., 120, 5534–5538(2016).
14)REDOX state analysis of platinoid elements in simulated high-level radioactive waste glass by synchrotron radiation based EXAFS, Y. Okamoto, H. Shiwaku, M. Nakada, S. Komamine, E. Ochi, M. Akabori, J.Nucl.Mater., 471, 110-115(2016).

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